2008年04月05日

読了メモ:そして、奇跡は起こった!

 きっかけは、チャットしているときに知人が「この本おもしろそう」と教えてくれた、翻訳者サイトのあとがきのページだったかと思います。
 あ、これは『ケルトの白馬』の翻訳の人じゃないか、と気がついたので、取り寄せてみました。

 成功したとはいえない、南極探検隊。氷に包まれて身動きがとれなくなり、船は氷に押しつぶされて沈没。氷塊の上をあるときはさまよい、あるときは留まり……援助の手も届かなかったというのに、探検隊の全員が生還した――その大事件の流れを追う、ドキュメンタリーです。

 読んでみたら、思った通り、とてもおもしろかったです。
 ものすごくコンパクトにまとめられているので、もっとぎっしり、みっちり書いた本も読みたいなと思わなくもないのですが、それでも、よかったなぁ。
 心に残る場面がいくつもありました。人が集団として動くことの意味、それぞれの役割を果たすことの重要さ、待つしかない状況における焦燥感と閉塞感がいかに人を押しつぶすか、その難局を乗り越えたシャクルトンや腹心の部下たちの精神的な強さ。
そして、奇跡は起こった

著者名:ジェニファー・アームストロング(著)
灰島かり(訳)
出版社:評論社
出版年:2000.09
ISBN :9784566052673
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2008年03月22日

読了メモ:旧かなづかひで書く日本語

 旧かな入門書だと思って買ったのですが、本書の半分くらいは、新かなという思想(大雑把な表現かもしれませんが、わたしは本書における「新かな」は「思想」――それもあまり歓迎されざる「思想」である、ととらえて読みました)を日本人に強要した政府や新かな派識者への批判と、旧かなに戻りましょう! という提案ですね。

 わたしは、文化の変化というものは非可逆なものだと思います。たとえそれが強制的にもたらされたものであっても、です。

 これだけ新かなが普及してから旧かなに「戻す」のは、すでに「戻す」のではなく「変化の強制」にほかならないでしょう。
 ふたたび「旧かな→新かな」と同様の強権発動がおこなわれねば、無理なのです。すると、新かな導入に対する批判とほぼ同じ批判が、旧かな復活(達成すれば、ですが)にもふりかかるのは必至でしょう。
 新かなで書かれた文学作品(我々の年代の人間が親しんで来た「書かれたもの」すべて)が、そのままのかたちで受け止めることが困難になるでしょう。数百年前の古典に親しみやすくなるかわりに、親子世代間で書き文字によるコミュニケーションの断絶が起きたり、少し前のベストセラーが読みづらくなったりするのです。
 近い時代のものの方が、遠い時代のものよりわからなくなる。それは不自然である、とわたしは思います。

 ただ、古典をなんでもかんでも新かなに直すのは如何なものか、とはたしかに思わされますね。本書にいくつか実例が載っていますが、まさに目を覆わんばかりです。

 なにやら感想の順序が前後してしまいましたが、もちろん、「旧かなづかひで書く」ための実践的な知識も満載されておりますので、本書を読んできちんと勉強すれば、かなり書けるようになるのではないかと思います。
旧かなづかひで書く日本語

著者名:萩野貞樹(著)
出版社:幻冬舎
出版年:2007.07
ISBN :9784344980471
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2008年03月04日

一週間早いプレゼント

 来週、誕生日なわけですが、配偶者に「なにがほしい」と訊かれて正直にほしいものをいったら値段も見ずに買ってくれました……本なら値段を見ないで買っちゃう癖は、夫婦ともにやめた方がいいと思います。

 買ってもらったのはコレです。

 日本国語大辞典……の、精選版。精選版ですら、通読は無理そうなすごいボリュームです。うわぁでも幸せ〜。三冊ぜんぶ膝の上に抱えてうっとりしてたら、家族に変な顔をされました。
 重くないよ? 気のせいだけど。

 サイズをはかってみたところ、たとえば第三巻の本文の厚みは6cmほど、しっかりした造本なので、分厚い表紙裏表紙までおさまるケースの外寸は7.5cmくらいになります。装丁は菊地信義氏。品のある、きれいな本です。本文フォントのポイントはかなり小さめです。そろそろお年頃のわたくしなので、じきに老眼鏡が必要になるかもしれません。
日本国語大辞典 第1巻 精選版 あ〜こ

著者名:小学館国語辞典編集部(編集)
出版社:小学館
出版年:2005.12
ISBN :9784095210216
日本国語大辞典 第2巻 精選版 さ〜の

著者名:小学館国語辞典編集部(編集)
出版社:小学館
出版年:2006.01
ISBN :9784095210223
日本国語大辞典 第3巻 精選版 は〜ん/漢字索引

著者名:小学館国語辞典編集部(編集)
出版社:小学館
出版年:2006.02
ISBN :9784095210230

 さすがに全巻揃えるのはキツいので諦めましたが、精選版なら、なんとか……。いいもの買ってもらったんだから仕事しようね、自分!

 ぱらっと見ただけでびっくり、たとえば「花」が一ページにおさまってないもの。四段組みの本文、「花」はまるまる二ページ使ってちょっとハミ出すくらいの量の情報があります。それを眺めた結果、なんとなく浮かんできたものが「花誘う」なのですが、ほんとうに「なんとなく浮かんだ」だけなので、オチも意味もなくてすみません。

 掲載されている「花誘う」の用例は『宇津保物語』のものですが、「花」が桜をさすものと固定されたのは平安後期とみられ、梅であったのは奈良時代とのことです。『宇津保物語』は平安中期の作なので、「花誘う」が当時すでによく使われていたフレーズだとしたら、梅のためのものか、桜のためのものか、微妙かも……ひらひらと舞い散る花であれば、なんでもよさそうな気もするけれど。
 ついでにいうと、『梁塵秘抄』は平安末期のものなので、ここで「花」といわれたらまず桜ということか……などとねちねち考えるのが楽しい人には幸せな辞書ですよ。

 ああ、素晴らしい!

 巻末に漢字索引があるのもいいです。これで「読めない熟語」も調べられるというわけですが、戦前の辞書は漢字索引が当たり前だったという説明があって、へぇ〜、と思いました。なるほどねぇ……。
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2008年02月19日

読了メモ:スティング

 刊行されてすぐ買ったものの、なんだかとっつきづらくてずっと積んであった本。ザ・ポリス再結成来日ツアーには行けなかったので、かわりに本でも読もうかな、と手にとってみました。

 ハードカバーなのですが、これは文庫にはなかなか落ちないだろうなあ、いま買っておかないとまずいな、と思って買ったんですよね。なのに積んでしまうなんて、もったいない>自分

 導入部はやはり読みづらいのですが――秘跡体験というか、あやしい宗教がらみのドラッグでのバッド・トリップから、無意識に抱えこんできた個人的な過去に踏みこんでいく……という体裁です。凝っているし、描写もおもしろいんだけど、わたしには入りづらかったです――二章以降は経時順で個人史が語られるのですが、ぐいぐいひきこまれて読んでしまいました。
 当時の音楽シーンに詳しい人であれば、もっとおもしろいと思います。錚々たる(推測。わたしは詳しくないから!)名前が並んでいるので。

 スティングが両親の不和に傷つき、悩み、自分は絶対にこんな風にはならない! と決意するのを読みながら、ファンとしては「でもこの人たしか離婚して再婚してたよな」って知識があるし、本文にもそうほのめかされているので、まるで歴史小説を読んでいるようですよね。未来はすでに動かしがたい事実として規定されているのだから。
 最初の奥さんのことは非常に魅力的に描かれているんだけど、彼女のどこかが駄目だった、といった記述はないので(まあご本人に配慮したら書けないという事情はありそうだけど)、本の流れでいくと、「家庭」というものからつねに逃れようとする性質が刻みこまれていたために、そうなった、ように読めてしまうんだよなー。

 しかし、教育実習中&教職についていた時期のスティングに学んだ子どもたちが、実際、どこかにいるのね! と思うと羨ましい。だってスティングが『ホビット』朗読したっていうんですよ! 『エリダー』とか! しかも音楽の授業は弾き語りだの合奏だのって……悶絶するわ。そんな学校あったら行かせてください。
スティング

著者名:スティング(著)
東本貢司(訳)
出版社:PHP研究所
出版年:2005.01
ISBN :9784569640624
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2007年10月06日

読了メモ:ハトの大研究

 子どもと図書館に行ったときに、目についたので借りてきました。最近、ネット書店のオススメ本リストに盛んに入って来ていたので、気になっていたのです。たぶん『伝書鳩 もうひとつのIT』が購入履歴にあるからでしょう。
 長文感想 63870伝書鳩 もうひとつのIT

 で、読んでみたところ、これが子ども向けとはいえあなどれない出来。コンパクトな文字数でよくまとまっていて、実にていねいな仕事だなぁと感心させられました。

 もちろん、先述の『伝書鳩 もうひとつのIT』とかさなる内容も多いのですが、あちらが伝書鳩に焦点をあわせているのに対して、こちらはもっと網羅的に「ハト」をとりあげています。野生の鳩も含みます。なにしろ大磯に海水を飲みにくるハトがいるなんて、知りませんでした。大磯のアオバトについては、【こまたんアオバト探検隊】の調査で、いろいろなことがわかってきたとのこと。
 アオバト、見てみたいなぁ。大磯に行ってみようかな、という気分にさせられる本です……ちょっと遅かったなぁ。今年のシーズンはもう終わっているみたい。

 NintendoDSのゲームソフト『おいでよどうぶつの森』プレーヤーにはお馴染み、ピジョンミルクの正体についても詳しい解説がありますよ。
ハトの大研究

著者名:国松俊英(著)
関口シュン(画)
出版社:PHP研究所
出版年:2005.03
ISBN :9784569685359
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2007年06月01日

献本御礼&読了メモ:お片づけセラピー

 著者の袋居さんにいただきました! ありがとうございます。

 副題は、ADHD/ADDのためのハッピーサバイバル法。日本ではまだ社会的認知がなかなか進んでいない、この症例(本書ではこれを「脳のクセ」と呼んでいます)に悩む人に向けての、対応策提案集……と言えばいいのかな?

 わたしも「かたづけられない人」なのですが、この症例……とは言えない程度(つまり、ただのダラシナイ人?)かな。と、チェックシートなどやってみて思うわけですが(そうです、ひょっとして自分もADHD? と気になっている人向けの、チェックシートも収録されています)、べつにその症例の人に限らず、こうやれば日常生活が楽になるよ〜、という実践的なポイントが満載。ゴミの水際侵入阻止とか。
「楽しく生きようよ」という提案が、押しつけがましくない範囲で並んでいて、読むと前向きな気分になれます。

 昨日読んだのですが、書きそびれて今日になってしまいました。ああ、もう六月か〜……。
お片づけセラピー

著者名:桜井公子(著)
袋居司(著)
開口逸巳(画)
出版社:宝島社
出版年:2007.05
ISBN :9784796658294
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2007年04月07日

読了メモ:朽ちていった命

 知人の感想文を見て、これは読むべき本みたいな気がするなぁ、と購入。ほんとうに、読むべき本でした。

 1999年に発生した東海村の臨界事故後、致死量レベルの放射線を浴びて治療を受けた作業員のうち、そのひとりの治療経過を追った一冊です。ドキュメンタリー番組の文庫化で、単純にわかりやすく見せねばならないテレビ番組の、「絵」や「音」や「間」の力が及ばないかわりに、カルテなどの資料や突っ込んだ説明が盛り込まれています。
 また、自分が受け入れられるペースで考えながら読むことができるのも、本というメディアの特徴でしょう。
 つらい本です。

 遠くで起きた臨界事故なんて、他人事に過ぎないと感じるかもしれないけれど。でも、日本なんて狭い国で、どんな人でも「知り合い」を十数人程度辿れば「知り合い」ということになる程度の規模。
 あなたは原子力施設の近くに住んでいないかもしれません。
 あなたの大事な人は住んでいませんか。
 あなたの大事な人の大事な人は……?

 かなり結末近くに、本書で治療を受け、83日間戦いぬいた大内氏の細君から医師に届いた手紙からの抜粋が掲載されています。
 乱暴にまとめてしまうと、「原子力に絶対の安全などない。国や会社がその危険性の周知徹底をしてくれるとは、とうてい望めない。ふたたび事故は起きるだろうと思わざるを得ない」という内容です。
 非常に冷静で、妥当な分析だと感じました。
 その認識の上にたって、手紙はつづきます――だから、夫や同僚が命を削って教え残したものがある医療の分野でこそ、進歩していってほしい。次に事故があったときのために、と。

 こんな手紙が医師のもとに届いたという事実から、犠牲者の家族は、行政や企業から信頼するに足る対応を受けなかったこと、そして医療チームはその信頼を勝ち取るにふさわしい働きをしたのだということが、読みとれるような気がしました。
朽ちていった命

著者名:NHK「東海村臨界事故」取材班(著)
出版社:新潮社
出版年:2006.09
ISBN :9784101295510

 本家サイト感想文リスト 63870 NHK
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2007年01月22日

読了メモ:著作権とは何か

 どこかのサイトに著作権がらみのことを調べに行ったときに「この本が入門書としてオススメ!」と書かれていたのがきっかけで、購入してみました。

 読みはじめてみて、なるほど、と思いました。
 著作権についてのあれこれを説明する文章で、今までに出会ったなかでは、もっとも読みやすい! と断言してもいい内容です。たしかに(例によって、もうどこで紹介されていたんだかサッパリですが……)、入門書としてオススメです。
 テーマが明快なのはもちろん、それに沿って説く文章自体も調子よく、ときにはソツなくユーモアも交えて、しかし脱線し過ぎずに……と、素晴らしい仕事。

 ただ、ご本人も書いておられますが、隣接権あたりについての踏み込みは浅く、あくまで入門書として考えられた方がいいと思います。つまり「これだけ読んでおけば著作権についてすべてがわかる!」というものではありません。ただ、「これくらいは読んでおきたい」本だと思います。

 ネットにこうやって文書を公開することで、我々は「公衆に送信」しているのだということを自覚し、また自戒するために。そして著作権はべつに怖いものではなく、豊かな創作活動を産み出せる社会をつくるためのものだ、と考えるためにも。
著作権とは何か

著者名:福井健策(著)
出版社:集英社
出版年:2005.05
ISBN :4087202941
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2007年01月19日

読了メモ:梁塵秘抄

 やっと読み終わった……や、薄い本なんですけど扱っているのが散文ではなく詩(というか、歌謡の歌詞のみというか)なので、小説のように前後の脈絡をとらえて読んでいけばOK! って感じではなく。

 著者の解釈や説明を読んでなるほどと思いつつ、そういう「教養」抜きにして、たぶん現代人ならではの語感や語彙の違いから来る「誤解」も見逃すことにして、あらためて詩句自体を見てみるとどうか? とか……そんな読みかたしてたら、えっらい時間かかりました。

 非常によく知られた歌ですが、やはり
遊びをせんとや生(うま)れけむ
戯(たはぶ)れせんとや生(むま)れけん
遊ぶ子供の声聞けば
我が身さへこそゆるがるれ(三五九)
(p.19)

 いい歌だなぁ、と思います。漠然とした「無常」というか、「無我」の境地に似たものを技芸(あるいは遊芸)の道に見出し、これが本分だと心の底から考えるのではなく感じてしまって、心より先に身体が動いてしまう、動かされてしまう、というような情景が浮かびます。勝手な解釈ですけど。

 もちろん、本書のキモである「教養」の部分もすごく面白いですよ。単に詩句だけがつづいていたら、読むのに時間がかかり過ぎて投げちゃうんじゃないかと思うのですが、一句ずつ時代の背景を、あるいはその後の展開を、または過去を、特定の個人を……と結びつけた内容が興味深いので、読み通すことができたと思います。
 とくに『梁塵秘抄』の撰者である後白河院の今様への傾倒ぶりなど、歴史の流れのなかにおける「今様」というか、……違うなぁ、「今様」を読んでいくうちに、それを集めた後白河院に意識が届き、時代がその後どう動いていったかに想到してまた時間がかかっちゃうというか……。奥深いので、覗きこむほどに底の暗さと遠さを知る感じ?

 や、読みづらい本ではないです! おもしろかったです。
梁塵秘抄

著者名:西郷信綱(著)
出版社:筑摩書房
出版年:2004.10
ISBN :4480088814
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2007年01月03日

読了メモ:妖精の女王 4

 読み終わりました〜。分厚かったけど、本文は上半分だけという、実はライトノベルより密度薄いよね? な文章なので(笑)、難しい象徴だのの解釈を考えなければ、そんなに苦労するものでもないかな〜、と思います。やはり、中盤の「ブリトマートの恋人、メイドのコスプレさせられる」のあたりが、カッ飛んでておかしかったかな。

 四巻で終わりなのですが、いささか尻切れとんぼな感じがしました。結語が、自分の作品を批判した廷臣への厭味っぽい内容なのも、ちょっと野暮だなぁ、と思います。まあ死活問題だったのでしょうけど、ほんとうに。

 著者没後の版本で追加されたという、女巨人(タイタン族の末裔)がジョーヴ(ゼウス)の支配に異を唱えて天界に上がる顛末を描いた二篇は、ちょっと楽しかったな。つくづく神話好きな自分を再発見。
妖精の女王 4

著者名:エドマンド・スペンサー(著)
和田勇一(訳)
福田昇八(訳)
出版社:筑摩書房
出版年:2005.07
ISBN :4480420746

 本家サイト感想文リスト 63870 Edmund Spenser
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2006年12月16日

読了メモ:妖精の女王 3

 だらだらと読み進めたので、ずっと前に名前が出た人の再登場! が辛いです。

 さて、この巻には前にSF大会でひかわさんが力説してらした「エリザベス女王のドリーム」をかなえるためのパートがありまして、美女ブリトマート(これがエリザベス女王の化身)が、アマゾンに虜にされている騎士アーティガンを助けに行くというものなのですが……たしかにこれはすごい。
 アマゾンの女王ったら、自分が試合でやっつけた騎士から鎧兜を剥ぎ取り、女装させちゃうんですよ。

 なぜ女装!? と思ったら、『申命記』に男性の女装、女性の男装を禁じる言葉があるから、まあ冒涜行為って意味なんでしょうけど……さらにエプロンも着せます。エプロンは堕落の象徴だそうですが……。
 あれですよ、甲冑をがっつり身につけて遍歴の旅ができる豪傑たちが、ずらっと並んでエプロンかけて、粛々と麻糸を紡いでるなどという情景を想像するだに恐ろしく。

 もちろん、颯爽とやってきたブリトマートは、アマゾンを負かし、その地に行われていた女性偏重のまつりごとを正すのですが、これも女王に配慮して記述がいろいろ微妙なのも面白いです。王様のための読み物だったら、「女が男の上に立つのはおかしい」と書くのは問題なくても、女王様のための読みものですから、ストレートに書き過ぎると身があやういのでしょう。
妖精の女王 3

著者名:エドマンド・スペンサー(著)
和田勇一(訳)
福田昇八(訳)
出版社:筑摩書房
出版年:2005.06
ISBN :4480420738

 本家サイト感想文リスト 63870 Edmund Spenser
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2006年12月12日

読了メモ:廃墟大全

 廃墟論集。トレヴィルから出ていたものの再刊(多少、内容に異同あり)だとか。文庫でお手軽、執筆陣が豪華(いずれ長文感想書くときにリストアップするので、ここでは省略。今、感想文時差が二冊にまで縮んでいるので、遠からず書けるでしょう……)だったので買ってみました。
 読むと、ピラネージの版画がとても欲しくなります。あと、フリードリヒとか。

 漠然と「廃墟いいのぅ」と考えていたその嗜好の根っこがどこにあるかとか、歴史上確認されている「廃墟嗜好」の変遷とか、いや勉強になる本でした。
 エヴァンゲリオン論も含まれているんですが、この本のために書かれたものではないそうで、ちょっとフォーカスがズレてるかな、と感じました。論自体はおもしろかったですけど。
 あと、劇場版が公開される前に書かれたものでもありますね。わたしも劇場版は見てないので、なんともかんともですが……。
廃墟大全

著者名:谷川渥(編集)
飯沢耕太郎(著)
出版社:中央公論新社
出版年:2003.03
ISBN :412204183X
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2006年12月09日

読了メモ:人間の土地

 買ったのは何ヵ月か前なのですが、ようやく読み終わりました。ぐいぐい読み進めるべき本でもないので……一言一句を味わうタイプというか、これって散文ですけど詩でもあり、哲学でもありますよね。いや、すごい本でした。

 きっかけは、四季さんのこの記事です。

 著者はサン・テグジュペリ、いわずと知れた『星の王子様』の作者。
 本書は、飛行機の操縦士としての彼自身の体験と、そこから得た洞察を「直接的に」表現した一冊だと思います。これを暗喩に満ちた物語にすると、たぶん『星の王子様』になるのでしょう。そこここに、共通するイメージの源泉を見ましたが、あきらかにこちらが「源」です。純粋な結晶のかがやきを感じます。
 いたるところに詩心(あるいは詩神?)を感じてしまうのは、訳が堀口大學だからでしょうか。フランス語で読むなんて芸当はとうていできかねますが、でも、原文も詩的なのだろうなぁ、きっと……。

 宮崎駿氏の解説も、非常に興味深かったです。
 素晴らしい一冊でした。
人間の土地

著者名:サン・テグジュペリ(著)
堀口大學(訳)
出版社:新潮社
出版年:2006.12
ISBN :4102122028
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2006年11月06日

読了メモ:妖精の女王

 かなり時間をかけてしまったのて「今、誰がどこでなにをやってるんだっけ?」というのが曖昧になったりしましたが、なんとか読み終わりました。この巻は、後半で美女ブリトマートの物語が語られます。未来の夫に出会うために甲冑に身をかためて出かけるのですが、特段に訓練をしたわけではなく、マジック・アイテムでもう絶対負けない! みたいな感じです。そんな無敵の装備をこのお嬢さんに持たせてどうするんだ魔法使い!

 英国の王統がいかに正当な由緒正しいものであるかを説明するパートでもあるので、あれですが、こんな先々までの予言をされてもなぁ……と思ってしまいました。
妖精の女王 2

著者名:エドマンド・スペンサー(著)
和田勇一(訳)
福田昇八(訳)
出版社:筑摩書房
出版年:2005.05
ISBN :448042072X

63870 Edmund Spenser 感想一覧
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2006年10月09日

読了メモ:ヒトはなぜヒトを食べたか

 副題は「生態人類学から見た文化の起源」、原題は "Cannibals and Kings - The Origins of Clutures" 。たしか、ずーいぶん前にどこかのブログで紹介されていたのを見て、なにげなくアマゾンで注文。その後、そのまま積んであったものです。
 これは面白いですよ、うわー、すごい。今まで読んでいなかったのが残念なくらい面白い。ハードカバーで出てから文庫落ちしてるのに、ぜんぜん知らなかったなぁ……。

 情緒的なものを重んずる人には受け入れがたい内容かもしれませんが、ヒト社会の変転のほとんどすべてが、食糧生産のコストの問題できれいに説明されてしまうという、還元してしまえばかなりシンプルな内容です。

 人は食べねば生きていけない。食糧生産にかかるコストが、その生産様式で得られるベネフィットを上回ると、餓える。生活が改善されると(あるいは子どもを多く育てることで、より多くの食糧を得られるようになると)、人口は増える。増えると食糧生産が追いつかなくなる……。

 いろいろと目から鱗が落ちる感じのクールな論考でした。でもこれ、絶対受け入れないって人もいるだろうなぁ……。
ヒトはなぜヒトを食べたか

著者名:マーヴィン・ハリス(著)
鈴木洋一(訳)
出版社:早川書房
出版年:1997.05
ISBN :4150502102
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2006年10月07日

読了メモ:妖精の女王 1

 文庫版。エリザベス一世女王治世下の英国で、詩人スペンサーが描いた一大叙事詩。というより寓意詩という方がいいのかな? 妖精の女王グローリアーナの宮廷に集う騎士たちを順に主人公として、キリスト教の徳の、悪徳に対する闘争と勝利を描きます。たぶんそんな感じ。

 ハードカバーで出版されたときに入手しそこなっていたので、文庫化されたのは望外の喜びでした。

 わたしから見ると「妖精」というのはきわめて「異教」的なものに思えるのですが、それが書き手(及び当時の読み手)には違和感なくキリスト教的世界観に受け入れられていたらしい、というのが面白いですよね。アダムとイヴの娘たるユーナ姫(比喩的な意味ではなく、ほんとうに「あの」アダムと「あの」イヴの娘として描かれているのです)が、なぜ妖精の宮廷に助力を求めるのか、と最初はびっくりしたのですが、そういうものみたいですよ。
 きっと「妖精」という言葉が喚起すべきイメージが、わたしが抱いているものとは、ぜんぜん違うんだろうなぁ……。

 さまざまな古典からの本歌取り的な部分も多いようで、『狂えるオルランド』や『アエネイス』も読まなきゃなぁ、と思いました。うーん、読まなきゃいけない本か、山盛りです。
妖精の女王 1

著者名:エドマンド・スペンサー(著)
和田勇一(訳)
福田昇八(訳)
出版社:筑摩書房
出版年:2005.04
ISBN :4480420711
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2006年10月02日

読了メモ:はじめてのラテン語

 ラテン語面白いなぁと思ったので、つづけてこの本も買って読んでみました。前に読んだ『ラテン語の世界』(→長文感想)は、通読するための「読みもの」でしたが、こちらは初級文法書といった趣き。それでも、ところどころで示される「脱線」が面白く、そこのところは読み物としても充実していると思います。

 たとえば、カーマニアなら周知のことなのかもしれませんが、「audi」は「audio(聞く)」の命令形。なぜかというと、創業者の名前「Horch」が、ドイツ語で同じく「聞く」の命令形だったからだそうで……それを思いついたのが小学生の息子さんだったというからおどろきです。小学生でラテン語習ってるわけですね。メーカー名や車名にまつわる蘊蓄はもっと載ってますが、興味があるかたは本書でじかにお読みください。

 はじめはちゃんと暗記もしようとしたのですが、この程度の身の入れ方ではちっとも進めないということがわかったので、第一変化名詞の単数形だけ覚えて、ほかはただ勢いにまかせて通読したのみです。理解まではしていません。
 それでも通読しておけば「あ、これはこのへんで説明していたはず……」と拾って読み直しができるので、いいかな、と。

 ちなみに名詞の第一変化を覚えたおかげで、『からくりサーカス』のキー・アイテムである「アクア・ウィタエ(生命の水)」の「ウィタエ」は、「vita(生命、ラテン語では v は基本的に w 発音となります)」の所有格なのでは? と気がつきました。つまり「vitae(生命の)」。「aqua」は水だし、修飾語はラテン語の場合、被修飾語の後ろにつくのが慣例(とはいえ、前後しても問題ない)だそうですから、たぶんそういうことかと。
「aqua vitae」でググると、カタカナで「アクアヴィッテ」「アクアヴィータ」等と出てきますが、ラテン語読みをするなら「アクア・ウィタエ」でしょう。ちなみに意味は「蒸留酒」……。

 書影を見てびっくり、講談社現代新書の装丁が変わる前はこうだったんですねぇ。わたしが買った版は、白、黄色、そして黒文字のシンプルでモダンなものです。
はじめてのラテン語

著者名:大西英文(著)
出版社:講談社
出版年:1997.04
ISBN :4061493531
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2006年09月10日

読了メモ:ラテン語の世界

 寝る前にちびちび読んでいたのですが、ようやく読了。ラテン語の特質とその歴史を語る、比較的とっつきやすい読みものかと思います。
 よく知られた名句の由来や綴りなどもわかりますし、代表的な作家や作品についてもふれられていて、とてもおもしろかったです。おかげで「human」の語源は「man」とは関係ないなどという雑学も増えました。そうそう、英語の語源の話もたくさん載っていて、トリビアだらけです。
ラテン語の世界

著者名:小林標(著)
出版社:中央公論新社
出版年:2006.02
ISBN :4121018338

 最後の方は、日本国内におけるラテン語についてなのですが、著者は松平千秋さんのお弟子筋にあたられるとかで……松平さんて、前にわたしが「最近『イリアス』として出直した」と書いた、あの岩波文庫新版の訳者さんですよね。
イリアス 上

著者名:ホメロス(著)
松平千秋(訳)
出版社:岩波書店
出版年:2004.12
ISBN :4000072498
イリアス 下

著者名:ホメロス(著)
松平千秋(訳)
出版社:岩波書店
出版年:2004.12
ISBN :4000072501

 ギリシャ語もラテン語もイケてるわけですね……学者さんて、すごすぎる。
 そういや知り合いに、なんとか読むだけなら十二カ国語くらい、という学者さんがいますが、聞くだけでクラクラします。もうね。違う生き物なんじゃないかと思います。
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2006年08月19日

読了メモ:魔法ファンタジーの世界

 訳業を何度か目にしたことがある、脇明子さんが書かれた本なので、これは読んでおこうかなぁ、と買ってみました。
 が、なんかまた灰色な気分に……。ああつまりその、わたしもライトノベル業界の末端にこっそり紛れこんでいる身なので、「ご都合主義のライトノベル」などと十羽一からげに一刀両断されると、たいへんに辛いものが。

 そういうわけで、フラットな視点で読めたとは思えないことをまず、お気にとめていただいた上で、以下の感想をご覧くださいね。

『指輪物語』『ナルニア国ものがたり』『ゲド戦記』など、いわゆる古典的なファンタジーに関して、著者の視点からの分析にはあらたな発見もあっておもしろく、またロマン派やケルト復興などの歴史的な流れについても興味深く読めました。コンパクトに、うまくまとまっていると思います。

 こらしめや仕返しについての論も、わたしは賛成できます。
 より自分の言葉でいうと、個人的な意趣返しに、偉大な魔法の力を使わないでほしい、とたんに魔法が卑小に、あるいは卑近になってしまい、ファンタジーの本来もち得る力が失われてしまうから……と、いったところでしょうか。

 ただ、「子供に与えるべき本」について論を張るときに、具体的に著者が駄目だと思っている本のタイトルがありそうなのにもかかわらず、それを書かないまま話を勧めること、また「ゲームには詳しくないが」としながら、ゲームをひとからげに批判していることなど、批判対象への把握が曖昧なまま進んで行く部分は、気になりました。

 社会全体の流れを論じる場合に、作品をひとつひとつとりあげていくとコンパクトにはまとまり得ないことはわかりますが、この書きかたは、ちょっと感心できません。なにしろ「具体的に作品名を挙げるわけにはいかないが」とまで書かれているので、なんで挙げるわけにはいかないのか、挙げられないものを持ち出してなにを語ろうとしているのか、読者による検証ができないのに著者側の考えの押しつけではないのか、……と感じてしまいます。
 挙げられないなら、語るべきではないのではないでしょうか?
 惜しいなぁ、と思いました。ネガティヴな評価を特定の作品にくだし、それを語ることは微妙な問題なので、避けたのでしょうけど、だったら最初から持ち出さない方がよかったのにと思います。
魔法ファンタジーの世界
著者名:脇明子(著)
出版社:岩波書店
出版年:2006.05
ISBN :4004310202
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2006年08月16日

読了メモ:論語

 鞄に入れっぱなしになっていた関係で、外出するたびにチビチビ読み進めていたのですが、ようやく最後まで辿り着きました。

 論語というと、なんだか格式張ったものが出てくるような気がしますが、「当たり前だけど実行するのは難しいこと」について、平易に語られた文章かなぁ、と、読み終えてみると思います。
 ただ「仁」とか「君子」とか、どう定義するかというのは、すごく難しそうな気がしますけど。

 先日、宮城谷氏の小説で読んだばかりの管仲の逸話も登場したのですが、旧知の人をみつけたような気分になったのが、我ながらおかしかったです。
論語
著者名:孔子(著)
     金谷治(訳注)
出版社:岩波書店
出版年:2003.06
ISBN :4003320212
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2006年06月11日

読了メモ:はだか

 この詩集はいいよ、家に置いておくべきだといわれたので買ってみて、納得。
 すべて、ひらがなで書かれているのだけれど、すごいすごい。流石の感覚としか、いいようがないのですよ。

 唯一、違和感があったのが、「ぱんてぃ」かなぁ。
 どうやら女の子の視点で書かれているらしき詩に登場するこの語だけが、わたしをがっかりさせて、ああ、谷川俊太郎氏をもってして尚、こえられない壁なのか、と思いました。
 大げさな。と、自分で自分につっこんでしまいますが、まあせっかくの機会なので書いておきますよ。

 わたしが信ずるところでは、ですね。
 女の子(とくに小学生くらいまで)が穿く下着は、「パンツ」なのです。「ぱんてぃ」なんて呼んでしまうのは、男の人だけだと思うのです。
 だってね、母親がお風呂を出た娘にむかっていう台詞は、「ほら、おなかが冷えちゃうわよ、さっさとパンツ穿きなさい」だと思うのですよ。ここで「ぱんてぃ穿きなさい」とはいわないと思うのですよ。
 いう人もいるかもしれないけど、少数派だと思うのですよ。
 すると当然、いわれる側の女の子も、それを「パンツ」と認識するわけですよ。そうやって育っていくと思うのですよ。
 統計とったわけじゃないから「思うのです」としかいえないけど、思うのですよ、強く!!!

 そういうわけで、どうにもやるせない気分になったわけでした。

 変なとこにひっかかって、力説してしまいましたが、その一語以外は完璧でした。すばらしかったです。一家に一冊。
はだか
著者名:谷川俊太郎
出版社:筑摩書房
出版年:1988.07
ISBN :4480802754
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2006年05月07日

『野に住みて』到着

 結局、買ってしまいました。
 買ったものの、ページも開かないままでは終わらせないぞと、手にした勢いで巻頭から、歌集「翡翠」までを一気に通読。
 ものが短歌なので、文字面を追って物語の流れに沿えば、それだけで幸せになれる小説とは違い、かなり時間がかかりました。詩歌は、幸せの質が小説とはまた違いますね。

 不勉強なので、同時代の歌人の作品をよく知るわけでなく、文学史的にどういう位置づけかもわからず、優劣を論ずるほどの知識もありませんが、著者の文章のファンとしては、やはり、圧倒的な清澄さに心うたれる感じがしました。

 巻末の解説も読み、友人による片山廣子像が「楷書」のような正しい人、というのに、なんだか納得の想いでした。

 ヨネ・ノグチ(野口米次郎)による序文……というか、こういうの、なんて呼ぶのでしょう? 歌集刊行に寄せられた詩も、とても素敵でした。日英の2バージョンが掲載されています。
心揚りよろこびを以て吾が常に歌ひしむかしの歌は今いづこにある? 今吾は灰燼となれる廃墟なり。火災と共に吾が生の第三期は始まりぬ。
(p.4 ヨネ、ノグチ「歌集翡翠の出版せらるゝにあたりて片山夫人に与ふ」より)

 焼き払われて滅び去った廃墟からまた立ち上がる、余剰を取り去った詩心。その孤立、毅然とした佇まい、不滅の創造への渇仰と信念。読んでいて、どこまでも伸びやかに、空へと舞い上がる心地がしました。

 寡聞にして知らなかったのですが、ヨネ・ノグチは、イサム・ノグチのご尊父だそうで、検索してみたところ、19世紀末に渡米、彼の地でセンセーションを巻き起こした詩人だとか。日本に帰国後は大学で教鞭を取り、日本語と英語での著作を残したそうです。なるほどなぁ。

 いま、これを書きながら本を手にとり、適当に開いてみたら後半の資料篇で、ついまた読みふけってしまいました。
 村岡花子氏(『赤毛のアン』等、少女小説の翻訳で、わたしはお名前を存じ上げております)によって記された「在りし日の片山廣子との会話」など、非常に現実的であると同時に、どこか夢幻的でもあると感じました。
 巻頭の廣子の肖像写真は、村岡花子文庫の提供である由、はじめにおくづけを見てふしぎに感じていたのですが、今まで点と点でしかなかった同時代の文筆家たちが、こうして線でつながっていくのも、また興味深いものですね。文章の背景世界に、すっと奥行きが生じたようで。

 いい本です。おすすめします。装丁も上品で押しつけがましさがなく、凛とした佇まいで著者にふさわしいと思います。
 早く大切に書棚におさめなくては、しかし棚に入れてしまうと読まないよどうしよう、と引き裂かれる想いです。とほほ。
野に住みて
著者名:片山廣子
     松村みね子
出版社:月曜社
出版年:2006.04
ISBN :4901477234
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2006年04月17日

読了メモ:古代イスラエルの思想

 ちょっと前に読んだ『創世記』の翻訳をしていたかたの本です。
 副題が「旧約の預言者たち」で、おもしろそうだと思ったのですが……いや実際おもしろかったのですが、聖書の知識がなさ過ぎるので、正当に評価できません。何章の何節、とだけ書かれていて引用もないため、原典と引き比べて読む環境がある、あるいはあらかじめ知識がある人でないと無理でしょう。
 で、わたしは『創世記』しかまともに読んでいないし持っていないので……『創世記』に該当するところが図抜けておもしろかったので、やはり聖書といっしょに読まなきゃダメだなと思いました。

 逆に、この本を同時に読んでいなければ、『創世記』の族長時代の信仰に関する考えかたを、ふくらめることは不可能だったとも思うのです。やはり、なにかを勉強する時はまとめていろいろ読まないとな、とあらためて思いました。つまり、このまま勉強する気なら、聖書をもうちょっと読んだ方がいいんですけど……うーん。どうしよう。
古代イスラエルの思想
著者名:関根正雄
出版社:講談社
出版年:2004.01
ISBN :4061596330

63870 『創世記』感想
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2006年03月02日

読了メモ:五十嵐文男の華麗なるフィギュアスケート

 あからさまに、トリノ・オリンピックの余波なんですが。そこで荒川静香DVDとかに走らない自分のひねくれ加減がカワイイと思います。
 いや、久しぶりに五十嵐さんの解説をしみじみ聞いたのですが、やっぱりいいですよ。このかたの解説は。
 もともと、現役時代もわりと好きなスケーターさんだったこともあり、ふだんの解説への感謝もこめて、この本買おうかなあ、と思って買ってみました。買ってから気がついたのですが、著者のお名前もなにか記憶にひっかかるなぁ、考えること暫し。ひょっとして、と思いあたって検索してみたら、やっぱり!どこかで誰かか見ていてくれる 日本一の斬られ役福本清三』の人でした! あの本も、すごく良かった。
(2006-03-10追記:あらっ。違いますよ! なんで勘違いしたんだろう。確認したのに間違ってるとは、これ如何に)

 そしてこの本も、半分は「ご祝儀」のつもりで買ったのですが。これ。いやー。すごくいいですよ!
 五十嵐さんが本文中で「この本を自伝にするつもりはない」とおっしゃっているように、自伝というスタンスではなく、あくまで五十嵐文男というスケーターが見たフィギュアスケートの世界を描いているのですが、なにしろ専門性の高い現場のこと、目から鱗の知らなかった事実がボロボロと。
 メイキャップ用品とスパンコールの衣装が入った鞄を税関で開けられると気恥ずかしいとか、地元の選手にあらかじめ遊べるスポットを聞いておいて、みんなで声をかけあって試合のあとで遊びに行くなどという、誰とは限らない選手たちの日常を伺わせる話もあれば、五十嵐さん自身の逸話――たとえば、スケート靴をゴミ箱に放り込んで引退を決意した話など話題の幅も広く、とても楽しめたし、選手たちに少しだけ近づけたような気がしました。

 ちょっと微笑ましかったのは、ロビン・カズンズと五十嵐さんが相性がよくなかったこと、とか(笑) なるほど! なんか納得しました。逆に、スコット・ハミルトン(我が最愛の男子スケーター。今のところ)とは仲が良かったとか、とくにジャッジ9人のうち5人がハミルトンを一位にし、4人が五十嵐さんを一位にしたときに、ハミルトンが「君は凄かった、ぼくの負けだほんとうは」と言いに来たところなんか、ああ、やっぱりほんとにそういう人だったんだ〜、と、ただスケーティングだけを見て漠然と抱いていた印象が間違っていなかったように思えて、嬉しかったです。

 出版された時期がちょっと前なので、現役でばんばん活躍しているスケーターの名前はあまり出てきませんし、イナバウアーという言葉すら登場しません(笑)が、それでもプルシェンコ(若い!!!)はカラー写真で載ってるし、故障のためオリンピックに出場しそびれたクワンの話にもかなりの紙数をさいています。伝説的なスケーターたちの滑りについてのコメントも豊富で、これは買ってよかった読んでよかったフィギュアスケート愛好者のみなさんにオススメしたい! という一冊でした。
五十嵐文男の華麗なるフィギュアスケート
著者名:白石和己
出版社:新書館
出版年:1998.10
ISBN :4403320090
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2006年02月19日

読了メモ:世にも美しい数学入門

 この本、アッという間に読めます。一時間くらいかな。数式をいちいち理解しようとしたら絶対にもっと時間がかかるでしょうが、わたしは眺めるだけだったので……いや、べつに数式だらけではありませんが。
 もちろん、『博士の愛した数式』がおもしろかったから買ってみたわけですが、おもしろく読めました。

 数学者とは実利を求めない人のことと定義されていますが、それをいうと、実利にすぐ結びつかないと評価されづらいご時世、日本に数学者はしだいに生まれづらくなっていくのでしょうか。
 実利を無視し、霞を食べて生きるわけにもいきませんが、それ一辺倒というのは、いかにも貧しいですよね。企業が営利を追求するのは当たり前にしても、国家は、そして個人は、拝金主義に陥ってはいけないと思うのです。

 あー難しい。と、本書の内容とあまり関係のないあたりで、なんだか悩んでしまう夜なのでした。
世にも美しい数学入門
著者名:藤原正彦
     小川洋子
出版社:筑摩書房
出版年:2005.04
ISBN :4480687114

『博士の愛した数式』感想
 63870 http://usagiya.cside2.com/notes/rnote.php?u=books/01a/4101215235.htm
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2006年02月18日

ハートで感じる英文法(Lesson5「進行形」)

 めげずに、『ハートで感じる英文法』をちょっとずつ読む企画のつづき。前回からちょっと日があきましたが、今回は「進行形」だそうです。ハイ。

 ただの文法として見るぶんには、べつに難しくもなんともないですが「どういう局面で使うものか」という概念は、ぁ〜、ぜんぜん駄目ですね、こりゃ。

「躍動する」感覚で、と本では教えてくれますが、「まさに変化してるところ」はよくわかるんですけど(例文でいえば、「stopping」とか)、旅先からの「loving」とか、わからないなぁ。例文と解説を見れば「ナルホド」とは思いますが、自分が実際に作文する(あるいは英語で喋る)とき、とっさに「ing」を選べるかは、疑問です。

 これ難しいなぁ、と唸っていたら、なんと「Lesson6」も「ing」でした。今度は「be+ing」以外の「ing」を扱うようです。なるほどー。

 それでは勝手に副読本へ。
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2006年02月15日

読了メモ:風水講義

 読了。明の時代に成立した『地理人子須知』にもとづいて、スタンダードな中国古来の風水のありかたから、その背景に流れる精神、文化的基盤をといた一冊。

 これこれ。こういう風に、典拠とか実例とかがビシッと示されているスタイルが、やっぱり読んでいて落ち着くのですよ。

 中国では、もともと隠宅(=お墓)風水の方が盛んだったとか、すべての龍脈は崑崙から通じているとか、へぇ〜、なるほどなぁ、と納得。
 図版も豊富で、眺めているとおもしろいです。たとえば、放射線状に、中央=低〜周辺=高、という向きに描かれた山並み、という地図の「様式」にも、「中華」な意識を感じてみたり。まんなかがエラく、すべてがそれに従う、みたいな。もちろん考え過ぎというより、こじつけなのでしょうけど。下=低〜上=高、じゃないんだなぁ、というのが新鮮。

 曖昧模糊としていた「風水」が、ずいぶんわかったような……いや、わかったといっても、自分で地形が見られるわけではないし、専門用語もぜんぜん暗記できていませんが、それでも読む前よりはずいぶん「近づいた」と感じます。
風水講義
著者名:三浦國雄
出版社:文藝春秋
出版年:2006.01
ISBN :4166604880
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2006年02月14日

ハートで感じる英文法(Lesson4「現在完了」)

 めげずに、『ハートで感じる英文法』をちょっとずつ読む企画のつづき。前回で単語は終わり、今回は「現在完了」です。

 これは難しい。なにが難しいって、副読本から探すのが……。単語なら、バーッと目で追って見当をつけておくことができますが、「現在完了」となると、単語のように「決まったかたちの図形をサーチする」わけにはいきません。

 さて。この章のポイント、現在完了のイメージは「迫ってくる」だそうです。遠い過去にぽつんと置き去りにされ、もう「完全に終わって」いるのではなく、いま現在に迫ってくる。なるほど、と納得できるような気もしますが、うーん……。

 まあ、いつものように副読本へ。
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2006年02月13日

読了メモ:妖精の輪の中で

 妖精学の泰斗で、本邦における妖精紹介の立役者であろう井村君江氏が、みずからの半生を顧みてお書きになった一冊。
 実に豊潤な人生を生きてこられたのだな、としみじみ思わされた。

 座敷童が出るようなお宅で、しかも裏庭にイタチや白蛇が住まっているような環境で育たれたことが、妖精への傾倒……というより、親和性を育んだのだなと思うと同時に、ひるがえって、自分が不可思議なものを待ち望み、また文に書きしるしながら、巷間に流布するような「不思議話」をほぼ頭から信じようとしないのは、幼少時に不思議な体験を一切していないからだろうな、と思った。

 あたりまえのことだが、実体験もしないで信じる方が無理だし、体験したと感じる人にとっては信じない方が難しいのだ。

 米国には関心がもてない、機銃掃射で目の前で死んで行った人たちのことを思いだす、という文章にも、やはり「実体験」の重みを感じた。

 とにかく「井村さんというかたは、こういう風に生きてこられたのか」と、さまざまなおどろきにうたれる一冊だった。
妖精の輪の中で
著者名:井村君江
出版社:筑摩書房
出版年:2000.09
ISBN :4480042393
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2006年02月11日

読了メモ:数の原理で読むタロットカード

 神秘思想系は鬼門というか、すごく苦手なのですが(ファンタジー作家のくせに。笑)、そうばかりもいっていられないだろう、と読んでみました。ふだん読んでいる本とどうしても比べてしまうので、
「なんでここで典拠を示してくれないのかなぁ」
「ここに実例がないと説得力ないよ」
 などという感想が、まず出てきてしまうので……そういう自分の否定的な見方を「まず保留する」という態度を身につけるまでに、一週間くらいかかりました。とほほ。こんな薄い本を読むのに、何日かかってるんだ! って感じです。200ページ未満ですよ。一段組みで。文字も小さくないし!

 おもしろかったのは、さかんにバーバラ・ウォーカーを引用しているのに、そのバーバラ・ウォーカーの説について、乱暴だという評価も与えていることでしょうか。
 バーバラ・ウォーカーの『神話・伝説事典』を買ってしまった身なので(あるいは「買って、シマッターッ!」とも申します)、ほかの本でもあの調子なんだろうなと想像にかたくないわけですが、だったら「文化人類学者のバーバラ・ウォーカーは」といかにも斯界の権威であるかのような書きかたをしなければいいのに……。

 リンク先の書誌情報ページでわかるように、大アルカナだけを扱っているので、小アルカナまで期待していると肩すかしを食らいます。
数の原理で読むタロットカード
著者名:松村潔
出版社:星和書店
出版年:2003.10
ISBN :4791105141
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2006年02月10日

ハートで感じる英文法(Lesson3「that」)

 一日あいてしまいましたが、前回の「the」に引き続き、今日は Lesson 3 の「that」に進みました。

 thatは指し示す、導く言葉……って、わりとそのまんまなので、あまり違和感なく読んでしまい、却って心に残りません。これは困った。
 ただ、日本人には難しいかも、という用例は、たしかに馴染みのないものでした。そこで「that」を使うことは思いつかないなぁ……つまり、日本語で「それはね」といわない場面、かつ学校で習ってないような用法なんでしょうね。

では、いつものように。
posted by うさぎ屋 at 01:27| Comment(0) | TrackBack(0) | その他の本