2008年05月12日

読了メモ:イメイザーの美術

 うっわ、すっげ! というのが感想です。

 新人さんの作品だそうですが、これは新人じゃないと書けないなー、と納得です。
 一冊の本としてみると、余分なエピソードが多い割に、期待される展開にならず、読者を煙にまいてしまう感はあります。うまく表現できるかわかりませんが、たとえば「どんでん返し」が「おおっ、そうだったのか!」にならず「え、そんなこといわれても」になるというか。

 でもねえ、わたしはこの本、好きですよ。
「これが書きたいんだ」という強い意志が感じられるから。
 ちょっと不遜ないいかたを許していただければ、「小利口な計算なしに、書きたいものを書いた」感じです。
 子どもという生き物の未完成さ、かれらの秘めた可能性、そのすべてを芸術に――とくにこの作品では「絵」に――仮託して孵化させるという設定自体は興味深いんだけど、人物やエピソードがその強烈な着想の周辺をぐるぐる回らされてしまって、コントロールしきれていないというか。
 それでいて、個々のエピソードはすでに「決定事項である」というようにガッチリと描写されていて、ディテールまでこまかく描かれているので、よけいに読者が混乱するような気もします。部分部分が鮮明なので、全体像としては「はて、どこを見ればいいんですか?」という散漫な情景を提示することになってしまっているのです。

 その「コントロールしきれていない」部分にこそ、この物語の魅力があるのかもしれません。お話の/出版の/大人の都合にあわせて歪められていない、原初的な力を感じるので。
 そうしたものがお好きなかたは、たぶん読んで損をしたとは思わないでしょう。
 逆に、萌えとか燃えとか定型的な記号で書かれたエンターテインメントできっちり楽しませてくれることを期待して手にとると、たぶん肩すかしをくらいます。
イメイザーの美術

著者名:灰原とう(著)
出版社:小学館
出版年:2007.08
ISBN :9784094510249
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2008年05月03日

読了メモ:身代わり伯爵の結婚

 先月末の読了本ですが、感想を書くのが遅くなってしまいました。とても楽しい、ロマンティック・コメディのシリーズ第二巻です。

 ブログを順番にお読みいただいているかたには、おわかりいただけると思いますが、シリーズ1→3→2と変な順番で読んでしまったので、これを読んでようやくわかる第三巻! という部分がいくつかありました。パンの話とか。でも第二王子のエピソードがいちばん大きかったかな……続刊を読んだだけでは、こんな風だったとは想像がつかなかったので。
 まあ、メインはパンです。あとオバケ。それから着ぐるみ。

 あと、リヒャルトのラブ本腰度が低くてびっくりしました。そうか、二巻ではこんなだったのか……三巻では暇さえあれば頑張っているのに!
 それにしても、爽やか天然にこにこ青年のくせに、お酒に弱くて味音痴で寝起きが最低という組み合わせ。リヒャルトもかなり変わった人だと思います。奇人変人だらけのお話なので、たぶん目立たないんだけど。
身代わり伯爵の結婚

著者名:清家未森(著)
出版社:角川書店
出版年:2007.07
ISBN :9784044524029
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2008年04月25日

読了メモ:教会の悪魔

 国王(エドワード一世)の密偵ヒュー・コーベットのシリーズ第一弾。とのこと。

 ポール・ドハティは歴史ミステリ作家……なのですが、この人の本でわたしが好きなのはなんといってもこまかい(臭い、汚い)風俗描写。これに尽きます。これでもか! というほど不衛生。そこまでか! というほどグッチャグチャ。それを読んでたまらんワァと感じる自分をきもち悪く感じないでもないのだけど、さもありなんと納得できるから好きなのでしょうね……たぶん。
 なんとなく、信憑性を感じるというか。説得力があるというか。

 それだけの説得力を背景描写に割きながら、メインの骨格となるミステリ部分は毎回「いや、そんなめんどくさいことしないんじゃないか?」というくらいに謎! 不可能! 方向に傾斜しているのもおもしろい。それでバランスがとれているというべきなのかな。

 著者あとがきがネタバレでびっくりしました。うっかり先に見てしまったので(だから本の後ろから見る癖はなんとかしようよ!)、「こいつが黒幕だよな?」が名前が出た瞬間からわかっちゃったのは、もったいなかったと思います。ううう。
 訳者あとがきは、歴史から時代背景から風俗から、ざっと概観するかたちで手際も歯切れもよい内容で、とてもおもしろかったです。参考文献まで挙げられて、中世英国に理解を深めていきたい読者にとって、興味深い読みものになっていると思いました。
教会の悪魔

著者名:ポール・ドハティ(著)
和爾桃子(訳)
出版社:早川書房
出版年:2008.04
ISBN :9784150018115

本家サイト感想文一覧 63870 ポール・ドハティー
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2008年04月24日

読了メモ:身代わり伯爵の挑戦

〈身代わり伯爵〉シリーズの三作めです。あれっ、二作めは? と思われたかもしれませんが、エート……本屋さんになかったので。ハシゴして探したんですけど!

 まあそのー、一冊とばして読んでもいいかしら。いいよね? いいよ! と自分で自分に問いかけつつ了承してGO。とばしたせいで、若干、人間関係がよくわからない部分もありましたが、まぁそこはそれ、勢いで読んでしまいました。
 おもしろいなぁ。ミレーユって、素晴らし過ぎる。
 おもしろい本をありがとうございます。いやほんとうに。
身代わり伯爵の挑戦

著者名:清家未森(著)
出版社:角川書店
出版年:2007.11
ISBN :9784044524036
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2008年04月17日

読了メモ:身代わり伯爵の冒険

 あちこちで、非常に評判がいい(という印象がある)ので、読んでみました。

 ヒロインは元気でまっすぐで突っ走りやすい女の子、貴族の家に養子に行った双子の兄の身代わりをやらされることになり、パン屋の看板娘から華麗に転身!
 ……という話なのですが、とにかくヒロインのキャラクターが生き生きとしていて魅力的ですね。これは人気が出るのはわかるわ。しかも天然同士で恋愛感情がちょっと芽生えたかしら? という感じの描写がまた乙女向けレーベルの王道をいっていて、たまりません。
 これはよいものを読ませていただきました。ぜひ続刊にも手をつけたいと思います。

 パン屋ってヒロイン向きなのかなぁ。ちょっと前に読んだサンシャインもパン屋でした。身代わり伯爵をつとめる女の子ほどは元気過ぎませんが、彼女もかなりこう……アレでした。元気でした。ハイ。
身代わり伯爵の冒険

著者名:清家未森(著)
出版社:角川書店
出版年:2007.02
ISBN :9784044524012
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2008年04月10日

読了メモ:帝冠の恋

 ナポレオン戦争後のヨーロッパ王政復古期を舞台にした、王宮恋愛もの。と、大雑把にいってしまっていいのかな。

 それにしても、最近のコバルトはこう……読むごとに、これコバルトで出してたらほんとうはおもしろく読めるのに気がつかない読者が大量発生しちゃうんじゃないかというか、いやでもコバルト以外で出したら乙女にスルーされちゃうしなとか、部外者が悩むことじゃないだろうという懊悩にとらわれる傾向が高いですね。
 わたしが選んで読む本が、そうだ、ということなのかもしれませんが。まあ無理もないです。

 主役は、どうせ王族の女性は政略結婚の駒なんだから、嫁ぎ先で権力握って牛耳ってやる! という意気軒昂なお嬢さん。結婚相手は狩猟にしか興味がなさそうな皇太子、政敵は鉄腕宰相メッテルニヒ、恋の相手はナポレオンの遺児……と、そういう設定です。
 ふつう、少女小説なら「政略結婚の相手とラヴくなりました。うふっ」という展開が期待されるわけですが、残念ながら、運命の王子様は微妙な立場の美青年だったというお話です。
 おもしろかったです。
帝冠の恋

著者名:須賀しのぶ(著)
出版社:集英社
出版年:2008.04
ISBN :9784086011518

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2008年04月09日

読了メモ:嵐の夜(上)

 ついに、ついに、といえばこのシリーズも「ついに」でした。とくに歴史的にはどういう展開になるか探ろうとしたわけでもなく、ふらふらとネット上をうろついていただけで、なんとなくこういうことが起きるであろうことは知っておりました〈風の王国〉であります。時限爆弾どかーん、です。

 この著者の小説を読んでいて「いいな」と思うのは、キャラクターが不意に思いがけない一面を見せる場面がいくつもある、ということかなぁ……と、読みながら考えていました。
 つまり、「ああ、このキャラクターには小説のこの表面に見せてきた顔以外にも、引きずっている背景があるんだ」と思わせてくれる説得力がある。とでも説明すればよいのでしょうか。

 悲嘆に暮れる場面も、立ち直るところも、ふとした拍子にまた心が弱くなるところも、とてもリアルに感じます。礎石が抜けることであらわれた大きな変化を、今後、ヒロインはどう受け止めていくのか。
 ほんとうは下巻が出るまで待って一気読みしようかと思っていたのですが、つい読んでしまいました。
風の王国嵐の夜 上

著者名:毛利志生子(著)
出版社:集英社
出版年:2008.04
ISBN :9784086011457

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2008年04月07日

読了メモ:ヴィクトリアン・ローズ・テーラー 恋のドレスと黄昏に見る夢

 あちこちの少女文庫感想ブログで「ついに」「ついに」という表現が乱舞していたので、あわてて読みました。
 読み終えてなんとなく肩の荷が下りた気分になった自分が、ちょっと変な感じです。

 今回も、ドレスをお作りになるのはアディル様。しかし、作るのは薔薇色でではなく、夜想でという変則的な展開に。クリスの不調を見てとったパメラが、独断で依頼を断ったというのが彼女らしくて微笑ましくも力強いですね。
 パメラはほんとうに素晴らしいキャラクターだなぁ。

 このシリーズの魅力は、もちろん焦らされまくりの胸きゅんなところがメインではあるのですが、女の子同士のべとつかない、でも真剣な友情を見せてくれるパメラというキャラクターに拠るところも大なのではと思います。
恋のドレスと黄昏に見る夢

著者名:青木祐子(著)
出版社:集英社
出版年:2008.04
ISBN :9784086011488

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2008年03月31日

読了メモ:オラクルの光

 というわけで、『オーバーン城の夏』につづいて、ルルル文庫の『オラクルの光』を読んでみました。
Reading Diary-MEMO】で紹介されていた(上巻下巻)のも、興味をもったきっかけのひとつです。
 実際に本を読んでからリンク先の感想をあわせて読み直してみると、なるほど……と思います。すごく、そんな感じ。

 ヒロインは鄙びた村から大神官に見いだされた少女で、預言の才能があります。この世界では、預言(予言ではなく。神の言葉を伝えるということですね)の力をもつ者はオラクル神殿でその才能を磨き、儀式によって鳥に選ばれるという手順を踏んで、正式の預言者となります。なんとヒロインは鳥ではなく風に選ばれるという、凄まじい潜在能力を示すのですが、神殿にも特権階級の出身であることを鼻にかけた嫌な奴がいて……と、いうお話。
 ファンタジー色も薄くはないですが、やっぱり「素直でわかりやすい」ものなので、あまりドッチャリした(変な表現ですが……)ものを読みたくない人にも薦めやすいです。学園ものとして読んだ方がいいかも。

 わたしは、ものすごく素直なお話だなあ、と思いながら読みました。
 ストーリーもそうですが、キャラクターの造詣も一直線で歪みがなく、「安心させておいて、不意に足下をすくわれるのでは?」なんて不安を感じる場面はありません。
 もちろん、主人公たちは危機的状況に陥りますが、それもオーソドックスというか、物語の展開としてこうなるのよという流れの上でのことで「うわまさかそんな無理駄目嫌だってば!」ということではないのです。
 うーん、うまく説明できているかな……。

 わたしとしては、もう少し踏みこんだお話や世界の方が好きですが、対象年齢層を考えると、これはこれで良いものです。おもしろいことには間違いないし、カジュアルに楽しめるファンタジーだと思いました。
オラクルの光〜風に選ばれし娘

著者名:ヴィクトリア・ハンリー(著)
杉田七重(訳)
出版社:小学館
出版年:2008.02
ISBN :9784094520538
オラクルの光〜預言に隠されし陰謀

著者名:ヴィクトリア・ハンリー(著)
杉田七重(訳)
出版社:小学館
出版年:2008.03
ISBN :9784094520576
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2008年03月28日

読了メモ:オーバーン城の夏(上・下)

 だから寝る前に小説は駄目だと……思いながら、また朝まで読んでしまいました。もう駄目だ。
 ルルル文庫翻訳タイトル、かなり(わたしにとって)面白いものがあります。今回もアタリ物件でした。

 シャロン・シンといえば、早川文庫FTからプラチナ・ファンタジイというレーベル内レーベルとして邦訳がなされた『魔法使いとリリス』の、あの作家さんですよね?
 瑞々しい感性に満ちた、とてもきれいな話でした。たぶん著者は『最後のユニコーン』がとても好きなんじゃないかな……と、いうような。

 今作は、『魔法使いと〜』に比べればグッと親密な感じ。もう全然別世界だな、というほどには物語世界が遠くありません。これはヒロインの造詣に依るところが大きいように感じます。
 明るく元気で鈍感気味だけど素直な女の子が、数年かけての成長を通して「幸せな自分のまわりの生活」が、実はさまざまな翳りを帯びていることを知る、という物語です。が、とても苦かったり怖かったりする部分もあります。
 たとえば、エリサンドラは、いつも落ち着いていて、王子の婚約者にふさわしく穏やかで美しいヒロイン自慢の姉ですが、ヒロインが無邪気に信じているようには婚約者を愛していないし、自分の置かれた状況――政略のための駒として、王子あるいは別の権力者のもとへ嫁がされるしかない――を冷静に把握し、それを微笑の奥に隠しているといったように。

 相変わらず異種恋愛、人外のものにどうしようもなく魅了される人間の姿も描かれていて、三つ子の魂百までというか、この書き手はほんとうにこういうテーマが好きなんだな! と思わされました。ただ、この人外テーマはヒロインと密接にからみつつ、少し距離を置いたところで展開されるという仕掛けなので、それで「親しみやすい」感じなのかな、と思います。

 いやぁ、ヒロインが鈍感なのにもホドがある! と思うのですが、実に良い胸キュンでした。もちろんわたしのイチオシはケインで! 途中、かなりロデリックにもよろめきましたが(かっこ良過ぎるでしょう、この人!)、やっぱりケインで。ひとつよろしく(何を?)
オーバーン城の夏 上

著者名:シャロン・シン(著)
東川えり(訳)
出版社:小学館
出版年:2007.11
ISBN :9784094520385
オーバーン城の夏 下

著者名:シャロン・シン(著)
東川えり(訳)
出版社:小学館
出版年:2007.12
ISBN :9784094520453
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2008年03月24日

読了メモ:シャルビューク夫人の肖像

 ああもう、だから読みたい本は一気に読んじゃうから駄目だって自分でもわかってるのにこうなるんだから! ……というわけで、寝る前に少しだけ読むつもりでこうなりました。朝ですね、そろそろ。
 やはり寝る前に小説を読むのはやめなければ……でもそうやって自制して新書系の啓蒙書ばかり読んでいると、ますます「これは絶対読む! 読むし!」と思いながら積み上がった本が着々と室内で行方不明になるわけです。困ったなぁ。

 いやまあ、それはともかく。

 去年、これはすごいと唸らされた『ガラスのなかの少女』を書いた作家、ジェフリー・フォードの作品です。
『シャルビューク夫人の肖像』……思ったより早く、文庫に落ちてくれました。実は出てすぐ買ったのですが、読み始めたらこうなると思って積んであったのです。わたしの自己認識はどうしてこうイヤな方向に正確なのでしょうか!

 今作も、やはり「少し昔のアメリカ」を舞台にし、予言者として名をなしたという謎の女性からの肖像画作成依頼にとり憑かれる画家の運命を描いていきます。なにしろ、肖像画を描けというのに衝立の向こうから声を聞かせるだけ、姿は絶対に見せないというのです。この設定だけでも、かなり期待値は高まるというもの。しかも、ジェフリー・フォードだし!
 期待通り、変てこりんですてきな話でした。

 シャルビューク夫人の正体はなんとなく、……あーいや、でもほんとうの意味で「シャルビューク夫人とは誰だったのか?」はむしろ永遠の謎かもしれないなあ。彼女は実像と虚像のあいだにある、いわば鏡の硝子面みたいなもののように思われます。

 主人公はどうしようもない男ですが、でも自分にもこういうところあるよな、となんとなく納得してしまうのが罪な人。好きなのは主人公の友人でラファエル前派風の画風をもち、貧民窟というか犯罪者の巣窟に好んで居を構え、豪奢な調度に囲まれてアヘンをキメちゃっているシェンツです。
 あと、実はワトキンもさりげなく良かった。

 うっは、それは無理! というほど荒唐無稽なことを持ち出しながら、一方では細心過ぎるほど緻密であるという、この妙なバランス。ああもう、素晴らしい。信じられない奇跡、あり得ない超自然、すべてをシニカルに描写しながら、その深奥に潜むほんとうの不思議を描ける作家、と思います。

 変な作家だ、とも思います。大好きです。
シャルビューク夫人の肖像

著者名:ジェフリー・フォード(著)
田中一江(訳)
出版社:ランダムハウス講談社
出版年:2008.03
ISBN :9784270101667

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2008年03月18日

読了メモ:モンスターズ・イン・パラダイス 3

 昨日読み終えてたんですが、シリーズ最終巻の感想ってどうしてもネタバレっぽく言及してしまいそうで困ったな、と悩んでいるうちに今日まで終わりそうになったので、あわてて書きます。

 読みました!

 今回の作品は、ファンタジーというよりSFかなぁ……とわたしの中ではカテゴライズされているのですが、3巻では確信をもって言い切ることができます。これはSFだな!(わたし基準では、ということですが)

 ミーハーな感想を申しますと、『はじめのひとり』様が、いい感じにチャランポランで自分のことしか考えてないようでいて優しくて強くて駄目駄目で、とっても素敵でした!
 あと、カートの母上がカッコイー! ……と、年上世代のVの皆さんにやられました。
 さ、さらに個人的には、これでもうちょっと胸きゅんなシーンが……いや多くを望み過ぎですか。

 しかし、「人種」をネタにした話を日本でやるのは大変(というか、ほとんどの読者には理解されないことを覚悟せねばならない、と先輩作家さんが話しておられたのを聞いて、なるほどナーと納得したことがございます)なのに、堂々と、書き切ってしまわれたなぁ、と思います。
モンスターズ・イン・パラダイス 3

著者名:縞田理理(著)
出版社:新書館
出版年:2008.03
ISBN :9784403541254

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2008年03月11日

読了メモ:オドの魔法学校

 よ、読んじゃいました……。実は誕生日に「今日は誕生日だし読もうかな」って前三分の一くらい読んで、もったいなくなってそこで一旦休止していたのですが、結局読み終えてしまいました。

 マキリップだな〜! って感じなので、マキリップを愛する人は買いです。間違いなく。
 魔法の質感というか、空気感が違います。見紛いようもなく、マキリップです。

 ただ、ついて行けない人もいるんじゃないかなとは思います。
 あとは、わたし自身がもう魔法の世界に入りこめないのかもしれない、と少し寂しい気分になる部分もあり……ネタバレになってしまうので詳しくは書けませんが、わたしが「あ、こういう人いるわ」と認識したあの人やこの人はもっと断固として話が通じない場合が多く、結局、すべてが収束する場面にどれだけ説得力を感じられるかというか! もう無理です、これ以上は説明できません。

 まあそんなこんなで。うっとりと世界に浸りきれるかといえば、浸れる。しかしわたしの中の現実的な醒めた部分が「いやぁ、それはちょっとどうかしら?」と斜に構えるのを止めることができない……みたいな分裂した感想を抱かされた一冊でした。
オドの魔法学校

著者名:パトリシアA.マキリップ(著)
原島文世(訳)
出版社:東京創元社
出版年:2008.02
ISBN :9784488520076

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2008年02月26日

読了メモ:チーム・バチスタの栄光

 上巻は昨日読み終え、下巻を読んでいるうちに日付が変わってしまいました。
 この本は、【神北情報局】で褒められていたのを見て、読もうかなと思ったのです。病院内の権力闘争を逃げのびて不定愁訴外来の担当に、という主人公の設定に興味を惹かれました。そういえば、【手当たり次第の本棚】でも褒められてたよなぁ……と思いだし、購入。なんだ薄いなぁ、すぐ読めそうだなぁ、と読みはじめたら、ほんとうにすぐ読めてしまいました。

 薄いから、だけではありません。おもしろいのです。
 わたしは病院長がいちばん好きですが(いろんな意味で)、どのキャラクターも生き生きと描かれていて、びっくりさせられました。これデビュー作なんですよね?

 医療の現場が崩壊しかかっている、ということを訴えながら、エンターテインメント性のあるミステリに仕立ててしまう。しかもその崩壊を(結果的に)もっとも雄弁に語るのが誰のどの台詞であるか、ということを考えると、ものすごい着想力だと思いました。

 なにを書いてもネタバレになりそうなので、感想はこんなところにしておきますが、すごい小説でした。
チーム・バチスタの栄光 上

著者名:海堂尊(著)
出版社:宝島社
出版年:2007.11
ISBN :9784796661614
チーム・バチスタの栄光 下

著者名:海堂尊(著)
出版社:宝島社
出版年:2007.11
ISBN :9784796661638
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2008年02月13日

読了メモ:オペラ・アウローラ

 あちこちで感想文があがる中、いつネタバレを踏むかと戦々恐々……するくらいならさっさと読んじゃえ! と思ったので、読んじゃいました。ファンタジー禁止令はどうしたのでしょうか。知りませんよ、そんなもの。偉いさんにはわからんのです。ファンタジーなんて……ファンタジーなんてッ!

 いや自分でもなにを書いているかわからなくなりつつありますが、よかったです。
 死と再生はファンタジーがうまく扱えるネタの最たるものではないかと思います。それが個人にとどまらず、世界それ自体とつながるパターンが、実はわりと王道なんじゃないかなと。少なくともわたしの中で。
 十数年前、望ましいファンタジーのひとつの姿として
「世界の痛みとその癒し」
 である、と書いたことがあるのですが、この物語はまさにそれを体現したかのようなシリーズでした。

 シリーズ開巻から一巻、二巻あたりまでは著者のデビュー作ということもあり、少々筆がすべってるかなぁと感じる部分もありましたが、通して読んでいくと、それがまた逆に物語世界に次第に奥行きが生まれ、実体が感じられるような効果を生んでいたかも、とも思います。

 キャラクターの魅力だけでも、じゅうぶん読ませます。漫才道中っぷりは、半端ないです。
 だから、セールス的にも問題ないんじゃないかなーと大人のわたしは思ったりするわけですが、逆にこういうタイプの小説って、和製の、ライトノベルの、ファンタジーには興味がないという人には、まったく読まれなかったりするわけです……それはもったいない。
 ファンタジー好きには、ぜひお読みいただきたいシリーズです。
オペラ・アウローラ

著者名:栗原ちひろ(著)
出版社:角川書店
出版年:2008.01
ISBN :9784044514082

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2008年02月11日

読了メモ:狡猾なる死神よ

 というわけで、先に『狡猾なる死神よ』の方を読んでしまいました。だってマキリップもったいなくて……。

 さて、趣味っぽい? と思った『狡猾なる死神よ』、予想に違わずわたしの嗜好にバッチリでした。舞台はアメリカ。美術史家のヒロインが遭遇した奇妙な墓、おどろくほど美しく、当時の様式とはあきらかに異なる「舟の中に寝ている娘の死体」の彫刻は、いかなる芸術家の作品なのか? というところからグイグイ興味をひっぱっていくんですが。
 その彫刻が、ラファエル前派風だというんですよ。
 どんな美しい「舟のなかの死んだ乙女」像なのかと想像するだけでわくわくします。
 シャロットの乙女とかキーツとかミレーとかロセッティとかばんばん名前が出てきますので、その筋の人は、とりあえず押さえておいてもいいように思います。

 あと、260ページ過ぎたあたりで、それまでの期待値を200%ほど上回る胸キュン(当社比)シーンがあり、びびりました。うっは、サスペンスとロマンスは相性がよいとは知っていましたが、かなり油断していたので、やられました。
 以下ネタバレにつき感想が書けません!

 これは著者のデビュー作で、そのままシリーズ化されているようです。デビュー作でこれだけ書けてたら、いうことないですね。
狡猾なる死神よ

著者名:サラ・スチュアート・テイラー(著)
野口百合子(訳)
出版社:東京創元社
出版年:2008.02
ISBN :9784488270049
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2008年02月10日

読了メモ:オペラ・メモーリア

 シリーズ完結まであと一冊、の〈オペラ〉シリーズ、ここで短編集が挟まります。
 本屋を三軒もはしごして買った最終巻を見失い、一時はどうなることかと思いましたが(昨日、無事に発見しました! 単純に、出かけたときのバッグに入ったままだったのです)、まあとにかく短編集を先に読もうと。

 カナギ、ソラ、ミリアン三人の珍道中話が三本+バシュラールと詩人の過去の因縁連作、が収録されています。
 バシュラールと詩人の話は……うーん。なんか「うーん」としかコメントのしようがありません。グレちゃん(愛称)のズレっぷりは、楽しかったです。

 珍道中ものは、おそろしく息の合ったコメディ。
 とくに巻末の「MISSION:一般人のふり」な話が、非常にテンポよくグダグダでおもしろかったです。
 このアサッテの方向に三段跳びしまくりの軽妙なやりとりが楽しめるのも、あと一冊か〜……と思うと感慨深いです。
オペラ・メモーリア

著者名:栗原ちひろ(著)
出版社:角川書店
出版年:2007.12
ISBN :9784044514075

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2008年02月05日

読了メモ:天璋院篤姫(下)

 下巻も読みました。
 下巻は和宮降嫁後の苦労話てんこもりで、いやぁ大変大変、です。しかし重要人物が次々コロコロ死んでいくのをみると、篤姫でなくても毒殺を疑いたくなるのはわかりますね。
 幕末あたりの知識は通り一遍未満という感じなので、次になにが起きるのか、にも興味をもって読むことができたのは、無知ゆえのお得感アリって感じで。詳しい人だと逆に「ああ、このときにこれをこうしたのか、なるほど!」って読みかたになるんでしょうねぇ。

 最近、時代につれて変化してきた価値観について、なんとなく考えます。

 この時代の女性たちはほんとうに自分で選べる行為というものが少なくて、男性よりいっそう不自由だった。その男性もやっぱり不自由だった。でも逆に、その「選べない」ということ、選択肢が少なくて済むということが、負担でない面もあったんじゃないかな、ということを考えています。
 もちろんその時代に生まれて生き直したいなんて考えてるわけじゃありませんし、わたしは今の時代の人間だから今が好きです。
 ただ、「なんでもできる」は「なにをするか選ばなきゃいけない」ことでもあって、そこで立ち止まってしまう人も多いんじゃないかなぁ、と思うことも多いのです。外圧がギチギチに効いていれば、立ち止まることなど許されない。でも、今はそれが緩い状態ですよね。だから逆に、自由が重荷になる。そういうことも、あると思います。

 なんか小説とはあんまり関係なくなっちゃいましたが……いやでもこの本を読みながら考えたことなんですけど。

 巻末の対談も、おもしろかったです。とくに、篤姫に育てられたお家の(つまり徳川家の)子孫のかたに、宮尾氏が直接インタビューする機会があって、なんて話はわくわくしました。
 すごいよ、江戸時代はちょっとその先、すぐ向こうにまだあるんだ! と、思いませんか。少しずつ、遠ざかってはいるけれども。
天璋院篤姫 下 新装版

著者名:宮尾登美子(著)
出版社:講談社
出版年:2007.03
ISBN :9784062756853
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2008年02月04日

読了メモ:五つの鍵の物語

 就寝前に一話ずつ、ちびちびと読み進めて読了。鍵をめぐる、幻想的な雰囲気の作品集です。

 太田さんの作品といえば、つねに真摯に問いつづける、ごまかしのない姿勢をまず連想します。それはキャラクターもそうですが、ミステリとしてもそう。とても几帳面な作風、という印象があります。地に足がついているというか。

 ……なんですけど、幻想風味の強いものも、さらりと書いてしまわれるんですよね! それも、がっちり世界をつくりあげちゃう『月読』みたいなタイプから、少年少女を主人公にした冒険譚、今回の作品群のようにさっと異界に連れ去られてしまいそうな短編まで。
 オールマイティだなぁ。
五つの鍵の物語

著者名:太田忠司(著)
出版社:講談社
出版年:2007.12
ISBN :9784061825765

本家サイト感想文一覧 63870 太田忠司
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2008年02月02日

読了メモ:天璋院篤姫(上)

 大河ドラマ『篤姫』の原作です。ドラマがかなりよくできていて(大河というよりホーム・コメディっぽい気はしますけど、今のところ……)おもしろいので、原作はどんななのかな? と買ってみました。

 この著者の小説を読むのははじめてですが、みんなこんな感じなのでしょうか?
 印象的な場面や言葉、ときにはっとするような描写はあるのですけど、「これこれこうが、こうなので、こういう事情だった」という説明が、もっのすごい量です。そのすごい量を読ませてしまうんだから、逆にそれもすごいと思いますが……えええ、なんでわたしこんな系図の説明みたいな文章をいやがりもせずに延々と読んでるの!? と、びっくりするくらい説明、説明、また説明。
 すごいなぁ……。

 ドラマとの対比でいえば、二回だけでご退場なんてそんなもったいない! とびっくりした調所様の出番はちょっぴり、篤姫とのからみは皆無でまたびっくり。お守りのエピソードもなく、なるほどなぁ……ここからこうドラマにしていくのか、と勝手に納得したり感心したりです。
天璋院篤姫 上

著者名:宮尾登美子(著)
出版社:講談社
出版年:1987.11
ISBN :9784061840713
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2008年01月31日

読了メモ:サンシャイン&ヴァンパイア

 うっわ、扶桑社文庫なんてノー・チェックのところから出るの勘弁してください! な、ロビン・マッキンリイ。その昔、ハヤカワ文庫FTからダマール王国のシリーズが訳出されたりした「ヒロインがおとなしく救出を待ってるなんてそんなの駄目よ!」派な作家さんの小説です。

 舞台は吸血鬼、デーモン、獣人などの存在が当たり前で、何年か前にかれらとのあいだに戦争があった、という以外はまぁ「普通の」世界。戦うヒロインはパン職人です。彼女は町のコーヒーハウスでパンを焼くのが大好き、自分がつくったものをみんなが食べてくれるのが大好き、戦う相手はおもにパン種……という、地に足の着いた女の子。
 それがヴァンパイアの抗争に巻きこまれてしまい、「君が理性のある生き物だと私に思いださせてくれ」とヴァンパイアにいわれたりします。で、「わたしは〈チャーリーのコーヒーハウス〉でパンを焼いてるの、〈頭くらい大きなシナモンロール〉が人気メニュー」などという話をしたりするわけです。

 なんかこのすれ違い感というか、ズレた感というか……。
 吸血鬼が徹底して「ちょっと血が吸える人、ではありません」という描写がなされているのがすごい。もう全然「違う生き物」なんですよ。ベッド・シーンもあればスプラッタ・シーンもあるのですが、すべて主人公のユーモア感覚を通した一人称で語られるので、なにかこう……うまく説明できませんが、独特の乾いた雰囲気があって、べたつきません。
 おもしろいもの読んだなあ……。
サンシャイン&ヴァンパイア 上

著者名:ロビン・マッキンリイ(著)
藤井喜美枝(訳)
出版社:扶桑社
出版年:2007.11
ISBN :9784594055264
サンシャイン&ヴァンパイア 下

著者名:ロビン・マッキンリイ(著)
藤井喜美枝(訳)
出版社:扶桑社
出版年:2007.11
ISBN :9784594055271


 この二冊、昨日読んだんですけど(〆切一個クリアした&本を読むモードになってとまらなかったので!)、本家サイトを久々に更新したりして、こちらの更新が間に合いませんでした。
 本家、開設十周年です。こんなに長続きしたことに、ちょっとびっくり。
 あまり凝ったことをする時間がとれなかったので、昔のコンテンツを一気にアップロードしてあります。一時的な公開なので、ご興味がおありのかたは、お早めにお読みください。
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2008年01月29日

読了メモ:神秘の短剣、琥珀の望遠鏡

 一気に読みました。疲れました。プルマンさん、やりたい放題!

 第一部から第三部へ向かって、どんどんキリスト教的な知識(あるいはせめて精神的バックグラウンド)がないと、これ絶対に受けとめかたが違うよね? という雰囲気が濃くなっていくんですが……わたしの感想はといえば、いちいち神を殺さないといけない文化圏の人たちって、大変そうだなぁ、と。すみません、その程度の素地しかなくて。
 一神教は怖いよなぁ。ひとつの価値観しか認めませんよ、という意味ですから。

 第一部、ぎりぎり第二部前半くらいまでは、なんとか無視して読むこともできたんですが、そこから先はもう「キリスト教者として育ってしまった著者による神殺しと世界の再生の物語」であろうな、ととらえることしかできませんでした。
 つまり、著者の思想はこれだ、と強烈に印象づけられた感があり、思想に物語が従属してるかなぁ、と。
 少し逆説的でもあるかもしれません。著者は、考えろ、疑え、押しつけられたままを信じるな、といいたい(ように思われる)のに、その考え自体がちょっと押しつけがましいくらいに主張されている小説なわけですから。

 ともあれ、物語は預言(という方の文字を使っていいのか、ちょっと迷いますが……)の子であるライラをめぐり、さまざまな攻防をくり返しながら進みます。本人の知らないところでこんな人がこんな努力を……という場面も多く、群像劇としても読めそうな感じ。
 展開はスピーディだし、著者の筆力はすごいな、と唸らされます。

 第二部から出てきたキャラクターで魅力的なのは、トンボ乗りの小さな人たち。ライラやウィルと同行する二人もいいんですが、かれらの主君であるらしいローク卿もかっこよかったなあ。

 あと、死者の国へ行くシーンは、どうしても〈ゲド戦記〉の『さいはての島へ』を思いだしました。べつに真似ているといいたいわけではありません(そこは誤解のないように強調したいです)。
 ただ、ファンタジーにおいて、「冥府くだり」のモチーフは重要なのかもしれないなぁ、とぼんやり考えたという意味です。ぼんやりなのは、わたしが素でぼんやりさんだからですが……。
 あ、冥府のところはさすがに展開がゆっくりだったような。他の部分とくらべれば、ですけど。

 いやー、堪能しましたが、……疲れました。やっぱり一日一冊以下のペースがわたしには相応のようです。
神秘の短剣

著者名:フィリップ・プルマン(著)
大久保寛(訳)
出版社:新潮社
出版年:2004.02
ISBN :9784102024140
琥珀の望遠鏡

著者名:フィリップ・プルマン(著)
大久保寛(訳)
出版社:新潮社
出版年:2004.07
ISBN :9784102024157
琥珀の望遠鏡

著者名:フィリップ・プルマン(著)
大久保寛(訳)
出版社:新潮社
出版年:2004.07
ISBN :9784102024164

本家サイト感想文一覧 63870 フィリップ・プルマン
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2008年01月28日

読了メモ:神秘の短剣(上)

 先日読み返した『黄金の羅針盤』の続編です。〈ライラの冒険〉は三部作で、これは第二部にあたります。ハードカバーは一部一冊、文庫は一部を上下巻に二分冊しての刊行となっています……が、現時点で在庫があまりないようで、あちこちで探してようやく発見。『黄金の羅針盤』だけは、どこでもドーンと積んであるんだけど。続刊の増刷タイミングをはかっているところなのでしょうか。

 ともあれ、ここからは再読ではなく初読となります。
 ライラの世界は「我々の世界とよく似ているけどちょっと違う」という設定でしたが、そのライラが我々の世界に来て、複雑な事情を抱えた少年と出会い、ふたりの運命がからみあう……というのが大雑把なストーリーです。
 ライラと違ってこの少年ウィルは実にいい子ですよ、と事前に本を読んだ人から教わっていたのですが、いい子っていうか……怖いよウィル! 目的意識が明確で、迷いがなさ過ぎるっていうか。必要とあらば、バッサバッサとすべてを切り捨てられるタイプですよね。この年齢でこの行動力と決断力。おそろし過ぎる。
 今回はライラの世界とウィルの(我々の)世界のほかにも、いくつかの世界が登場するようですが、どれも特異な設定でおもしろい! 設定勝ちタイプの作家さんなのかもな、という考えがチラと頭の隅を過りました。
 キャラクターを掘り下げてネチネチ描写するのではなく、ぱんぱんぱーん、と奇異なものを提示して考えさせるタイプというか。なんか説明になっているんだかなっていないんだか、ですけど。

 それにしても、このシリーズはユンギアン的な読みかたをしたいという衝動にかられますね。ダイモンの設定が良過ぎるんだよなぁ……。
神秘の短剣

著者名:フィリップ・プルマン(著)
大久保寛(訳)
出版社:新潮社
出版年:2004.02
ISBN :9784102024133

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2008年01月24日

読了メモ:まぼろしの白馬

 再読です。去年新版が出たので、なんとなく買っていました。

 児童文学の古典ですが、たしか最初に読んだのは福武文庫版だったと思います。だからハイティーンの頃かなぁ。へたすると二十歳になってから読んだかも。
 そのとき全然ピンとこず、でもこの作品がすごく好きという人がたくさんいるので、いずれまた読んでみようかな、と思っていたわけです。それで『黄金の羅針盤』の感想があんまり昔と違ったのでびっくりしたつづきで、読み返してみようと。

 読み返した結果、読者の心に残る作品であるのは無理からぬことよのぅ、ということはわかりました。ただ、最近こういう「キリスト教=善」という図式が露骨に見える部分は引いてしまうかな。書かれた時代などを考えると、これが当たり前なのだと思いますけど。

 ああ、『黄金の羅針盤』はむしろ北米カトリック連盟からボイコット運動を受けるような作品だったところが、今の自分にはよかったのかも……。

 話が逸れましたが、キリスト教問題を抜きに考えると、ディテール描写の美しさに強くひかれます。巻末の訳者あとがきによると、これは全訳ではなく一部省略されているとのこと。むかしの児童文学翻訳って、そういうの多いみたいですね。全訳ではないという言及があればまだしも、なにも書いていない場合もあるようなので、そのへんは是正していってほしいと思います。
 とにかく、白馬をはじめとする魔術的な力をそなえた動物たちが、素晴らしい。ぜんぜん魔術的でもなんでもない、むしろ利己的な犬までかわいい! 利己的過ぎてかわいいです。馬鹿だなぁ、こいつ! みたいな感じに。
まぼろしの白馬 新版

著者名:エリザベス・グージ(著)
石井桃子(訳)
出版社:岩波書店
出版年:2007.01
ISBN :9784001141429

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2008年01月23日

読了メモ:黄金の羅針盤

 三月に映画公開を控えた『黄金の羅針盤』です。〈ライラの冒険〉シリーズの第一巻。

 再読です。初版刊行当時に購入し、一回読みました。読んだとき、話は波瀾万丈でおもしろいけどライラのキャラクターがあまりにも小生意気でこう……やっちゃ駄目といわれていることを片端からやってのける系なので、合わなくて。続刊は読まなくてもいいかなぁ、ハードカバー高いし(そう! ハードカバーで買ったんですよ、珍しく!)と放置していました。その後、文庫で出たときも「買わなきゃ〜、読まなきゃ〜」と思いつつ、しかし「でも『黄金の羅針盤』の内容をきれいに忘れてるし、読み返さないと続刊だけじゃ意味不明だよね?」と思うと面倒で、スルーしておりました。スミマセン。

 読み直してみました。やっぱり内容はほとんど忘れてました。スミマセン。

 忘れてたんですが、なんということでしょう。七年少々の月日がわたしを変えたようで、ライラが鬱陶しくありません。おどろいた。むしろかわいい。びっくりです。
 読んだときの自分の状態によって(わかりやすく普遍的ないいかたをすると「時期によって」あるいは「年齢によって」になるでしょうけど)、得るものが違う、つまり感想も変わるのは今までさんざん経験してきましたが、そのたびにびっくりします。
 確固たる「自己(あるいは自我、つまりワタシ)」という認識、時間軸の上をひとつにつながって延びているはずのこのワタシという存在は、ほんとうに数年前もワタシだったのか? と疑いたくなるような変わりっぷりです。

 うわぁどうしよう。信じられないほどおもしろかったですよ!

 もちろん続刊は注文しました(文庫版ですが、どうやらハードカバー版となにも違わないようですし。ついでにいえば、これは版元に電話して確認したのですが、映画公開に先立って出版された新装版も、中身はまったく初版と同じそうです)。
黄金の羅針盤

著者名:フィリップ・プルマン(著)
大久保寛(訳)
出版社:新潮社
出版年:1999.11
ISBN :9784105389017

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2008年01月15日

読了メモ:恋のドレスと秘密の鏡

〈ヴィクトリアン・ローズ・テーラー〉のシリーズですが、いやぁ〜……今回は怖い話でした。著者のうまさが光りました。感服つかまつりました。でも怖いです。

 ラブ面はもちろんきゅんきゅん盛り上げてくださるのですが、それにも増してこう……母-娘関係がじわっと怖いですよ! うわ〜……。

 シャーロックくんも、そろそろ腹を据えないと。ママンにさらわれちゃいますよ!
恋のドレスと秘密の鏡

著者名:青木祐子(著)
出版社:集英社
出版年:2007.12
ISBN :9784086011129

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2008年01月11日

読了メモ:ケストナーの「ほらふき男爵」

 これはたしか、Ciel Bleu で紹介されていたのを見て「お、こんなの文庫に落ちてるんだ」と気がついて購入したんじゃなかったかな……。
 新年初読み小説は、再話ものの定番となりました。ケストナーはやっぱりケストナーだ! という筆致。軽いのです。軽妙、という言葉を連想させられます。作品に、余計なことを背負わせない強さ。
 うーん、うまく表現できませんが、とにかく「不要なものを含まない」純粋さがあるのです。ケストナーの作品は、どれもそんな感じで、それが彼の文筆家としての個性なのだと思います。

 訳者解説を読むと、これを書いていた当時のケストナーの状況はかなり切迫したものだったはずなのですが、そんなことを微塵も感じさせません。

 収録作品は表題作の「ほらふき男爵」の他、「ドン・キホーテ」「シルダの町の人びと」「オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」「ガリバー旅行記」「長靴をはいた猫」……で、それぞれが短編の集成でもあるといった体裁(違うのは「長靴をはいた猫」くらいかな?)。
ケストナーのほらふき男爵

著者名:E.ケストナー(著)
池内紀(訳)
泉千穂子(訳)
出版社:筑摩書房
出版年:2000.01
ISBN :9784480035325

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2007年12月23日

読了メモ:風の王国 金の鈴

 相変わらず、感想書くのがめんどくさい→本を読むと書かなきゃいけない→近所に本屋なくなったし簡単に本買えないし→まあいいじゃん? みたいな感じで読書が滞りまくりですが、これは読まねばなるまいとネット書店で取り寄せました。
 チベットを舞台にした歴史劇、「つづくッ!」でした。前巻の最後。
 そしてまた「つづくッ!」……。

 薄々そんな展開になるんだろうなとは思っていましたがもう来ちゃったか。うはー。
 わかっていても衝撃は衝撃なんですね。なんか「これからどうすんの」って主人公以上に混乱しちゃったかもしれません。

 えーと、今回は ケセル ケレス[※2007-12-27修正! わぁぁん、間違った! すみません!]がよかったです。はい。
風の王国金の鈴

著者名:毛利志生子(著)
出版社:集英社
出版年:2007.11
ISBN :9784086010993

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2007年12月17日

読了メモ:古時計の秘密〈ナンシー・ドルー ミステリ〉

 先日二巻が出たナンシー・ドルーです。世界的少女探偵のシリーズ、せっかく手元にあるのだから、読んでおきたいじゃないですか……最近の自分の読書スピードには絶望を感じておりますが、まあ一冊ならなんとか。

 というわけで、読みました。
 冒頭の一文からもうびっくりです。
 明るく元気な十八歳の少女、ナンシー・ドルーは、真新しいダークブルーのコンバーチブルのハンドルを握り、郊外の道を走っていた。

 なんという効率的な! いきなり、読者は主人公が「明るく元気な十八歳の少女」であるとわかる仕掛けです。わかりやすい!

 全編すべてこんな感じなのですが、この直接話法でドンドンドーン! な文体には「わかりやすい」「説明が短い」「すぐに話の核心に入る」以外にもメリットがあることに、気づかされます。
 古びないんですよ。
 あきらかに、あーだこーだこまかい描写がないせいでしょう。実はこの作品は、1930年のものだというのに、無理無理、ついていけないわという古さはありません。

 ものすごくびっくりしました。
 おそらく訳者のかたも訳語に気をつかっておいでなのでしょうが、それにしても、おどろきです。

 さくさくっと読めて、ぱぱぱぱぱーっと解決してスッキリ爽快! になれる本です。安定してこのレベルなら、「ちょっと気散じにナンシーを読もうかしら」と思えるのではないでしょうか。
古時計の秘密

著者名:キャロリン・キーン(著)
渡辺庸子(訳)
出版社:東京創元社
出版年:2007.11
ISBN :9784488250034
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2007年12月11日

読了メモ:おまけのこ

『しゃばけ』にはじまる若旦那シリーズの文庫版。お江戸の大店の若旦那、病弱で死にそうで親にも兄やたちにも甘やかされて育った彼、実は妖怪の血を引いていて妖(あやかし)が見える! 兄やもほんとは妖!
 ……という設定の短編集。

 いつものように、おもしろかったです。
 とても上質の癒し系(若旦那や鳴家のキャラがもうねぇ……)エンターテインメントだと思うのですが、うまいなあ、と唸らされます。キャラクターの「らしさ」を失わせず、といって甘いの優しいのだけで世界が構成されているわけでもなく、きちんと厳しさも見せながら納得の結末に着地させているのが、素晴らしいと思います。

 結末で思い出しましたが、解説……。
「すごい!」と感じさせられるのは結末の落としかた、とくに印章が強い話が並んだ短編集なので、お気もちはわかりますが、……結末部分からの引用連発は控えられないものでしょうか。先に解説を読む人のためにも、うまく伏せていただきたいものだと思いました。
おまけのこ

著者名:畠中恵(著)
出版社:新潮社
出版年:2007.11
ISBN :9784101461243

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