新人さんの作品だそうですが、これは新人じゃないと書けないなー、と納得です。
一冊の本としてみると、余分なエピソードが多い割に、期待される展開にならず、読者を煙にまいてしまう感はあります。うまく表現できるかわかりませんが、たとえば「どんでん返し」が「おおっ、そうだったのか!」にならず「え、そんなこといわれても」になるというか。
でもねえ、わたしはこの本、好きですよ。
「これが書きたいんだ」という強い意志が感じられるから。
ちょっと不遜ないいかたを許していただければ、「小利口な計算なしに、書きたいものを書いた」感じです。
子どもという生き物の未完成さ、かれらの秘めた可能性、そのすべてを芸術に――とくにこの作品では「絵」に――仮託して孵化させるという設定自体は興味深いんだけど、人物やエピソードがその強烈な着想の周辺をぐるぐる回らされてしまって、コントロールしきれていないというか。
それでいて、個々のエピソードはすでに「決定事項である」というようにガッチリと描写されていて、ディテールまでこまかく描かれているので、よけいに読者が混乱するような気もします。部分部分が鮮明なので、全体像としては「はて、どこを見ればいいんですか?」という散漫な情景を提示することになってしまっているのです。
その「コントロールしきれていない」部分にこそ、この物語の魅力があるのかもしれません。お話の/出版の/大人の都合にあわせて歪められていない、原初的な力を感じるので。
そうしたものがお好きなかたは、たぶん読んで損をしたとは思わないでしょう。
逆に、萌えとか燃えとか定型的な記号で書かれたエンターテインメントできっちり楽しませてくれることを期待して手にとると、たぶん肩すかしをくらいます。
イメイザーの美術
著者名:灰原とう(著)
出版社:小学館
出版年:2007.08
ISBN :9784094510249
