わたしは、文化の変化というものは非可逆なものだと思います。たとえそれが強制的にもたらされたものであっても、です。
これだけ新かなが普及してから旧かなに「戻す」のは、すでに「戻す」のではなく「変化の強制」にほかならないでしょう。
ふたたび「旧かな→新かな」と同様の強権発動がおこなわれねば、無理なのです。すると、新かな導入に対する批判とほぼ同じ批判が、旧かな復活(達成すれば、ですが)にもふりかかるのは必至でしょう。
新かなで書かれた文学作品(我々の年代の人間が親しんで来た「書かれたもの」すべて)が、そのままのかたちで受け止めることが困難になるでしょう。数百年前の古典に親しみやすくなるかわりに、親子世代間で書き文字によるコミュニケーションの断絶が起きたり、少し前のベストセラーが読みづらくなったりするのです。
近い時代のものの方が、遠い時代のものよりわからなくなる。それは不自然である、とわたしは思います。
ただ、古典をなんでもかんでも新かなに直すのは如何なものか、とはたしかに思わされますね。本書にいくつか実例が載っていますが、まさに目を覆わんばかりです。
なにやら感想の順序が前後してしまいましたが、もちろん、「旧かなづかひで書く」ための実践的な知識も満載されておりますので、本書を読んできちんと勉強すれば、かなり書けるようになるのではないかと思います。
旧かなづかひで書く日本語
著者名:萩野貞樹(著)
出版社:幻冬舎
出版年:2007.07
ISBN :9784344980471
