2007年08月20日

読了メモ:僕僕先生

 第18回日本ファンタジーノベル大賞、大賞受賞作。ライトノベルの読者が読んでも違和感ない設定なのでは? と各所で評判をとっていたのを思いだし、家人に「これ評判いいよ」と書店店頭で指さしたら「では押さえておきましょう」と買われてしまいました。でっかい本増やしたくないなら指さすな>自分

 とまあ、そんな家庭の事情はともかく、読了しました。
 これは面白いですねぇ。著者はそうとうに中国の歴史に親しんで、自家薬籠中のものとされているようです。かなりのものだなと唸りながら読み終えてみたら、参考文献の版元が中華書局とか汲古書院とかですよ。さすがだ。

 さて、その著者が舞台に選んだ時代は唐、それも玄宗皇帝がまだ即位して間もない頃。つまり名君だった時期です。後年、ダメ君に変貌を遂げ、そっちの方が有名かもしれないですね。
〈風の王国〉より後、と言えば拙ブログの常連さんには、わかりやすいかも。

 主人公はニートです。マジでニート。父親は官僚を無難に勤め上げて隠居、その父が稼いだ財産を計算したら、なんだあくせく働かなくても適当に暮らしていけるじゃんと気がついて、だからなにもしないという、かなり計画性のあるニートです。このへんがちょっと普通じゃないです。
 とにかく孔子の孟子のというまっとうな教えを学ぶ気がなさそうな息子を、不老長寿を求めて道術にかぶれはじめた父が、仙人のところへお遣いにやったのが事件の発端。その仙人は、ちょうカワイイ女の子で、なぜか主人公を気に入ったようで、……で、いろいろあって、主人公を引き連れて旅に出るというお話。

 非常におもしろく、清々しく、かつ中世中国の歴史について多少の雑学も仕入れることができるという素敵な小説でした。難をいえば、ちょっと主人公に都合が良過ぎるかなぁ、というくらいかな。でも、そこまで含めてこの小説「らしさ」だと思います。
僕僕先生

著者名:仁木英之(著)
出版社:新潮社
出版年:2006.11
ISBN :9784103030515

本家サイト感想文一覧 63870 仁木英之
posted by うさぎ屋 at 00:53| Comment(7) | TrackBack(0) | 小説
この記事へのコメント
楽しい話でしたね。
こういった話をきれいに終わらせるのは難しいとは思いますが、終盤の事件の解決がちょっとありふれているかなあ。
前半から中盤の超俗的なところはかなりいいなと思ったもので、よけいにそう感じたのでした。
Posted by 高橋ま at 2007年08月20日 16:29
 そうなんですよね〜。最後がちょっと、えーと……ネタバレにならないようにいうと、ロマンスに比重を置いて読んでいなかった読者には、ちょっと肩すかしを食らう感があったんじゃないかと思います。
 あと、あっちに行くんじゃなくて、こっちに来る終わりかたの方が納得いったような。
Posted by うさぎ屋 at 2007年08月20日 18:37
ところで、ファンタジーノベル大賞って懐が深い、奇妙な味の小説が多く発掘されていますね。
最近ブレイクした森見登美彦もこの賞出身ですが、京都の大学生の妄想と日常を描いた『太陽の塔』って『僕僕先生』と全然違いますものね。
『太陽の塔』は高橋は好きな話ですが、うさぎ屋さん向きかというとちょっと疑問符ですが(笑)。
よけいなおせっかいですが、もし森見を読まれるなら、『太陽の塔』『四畳半神話大系』『きつねのはなし』『夜は短し歩けよ乙女』『〈新釈〉走れメロス 他四篇』と発行順に読むのが吉。作家的技量の向上とラブ度の増加が読み取れるので。
Posted by 高橋ま at 2007年08月24日 09:53
 ファンタジーノベル大賞は不思議な賞だとわたしも思います……。
 森見さんのお名前と作品名が合致しているのが『夜は短し歩けよ乙女』だけだったので、なんとなくそれが受賞作かと思いこんでいたら、全然違ってましたね。むはー。
 わかりました、読むときはできるだけ順番に! 押忍!
Posted by うさぎ屋 at 2007年08月24日 11:39
『夜は短し歩けよ乙女』はかなりの傑作です。ラブも山盛り。これはたぶんうさぎ屋さんも好まれるでしょう。
グリーンゲイトの記事を読んで思い付きましたが、森見さんの話は、なんだかうさぎ屋さんのお姉さんのコミックのような唐突さがありますね。
Posted by 高橋ま at 2007年08月24日 17:38
『夜は短し〜』は、とても気になっているタイトルなのですが、やっぱりわたしが好きそうなのですか。むむむむむ……。

 わたしは先日、「これ絶対おもしろいから!」と、〈(株)魔法株式会社〉を姉に買わせたんですが、あれも姉っぽいかもと後で思いました。

 一回「姉っぽいかも」と思いつくと、キャラが全部姉の絵柄で思い浮かぶのがおそろしいです。
Posted by うさぎ屋 at 2007年08月25日 01:00
『太陽の塔』はいいなあという感じ。『四畳半神話大系』はむむ、うまい。(←タイトルが松本零士の湿った青春ものを連想させますが、大学に入学してどのサークルに属するかによって分岐するイフもの好ファンタジー)『夜は短し歩けよ乙女』はすごい傑作だ。というふうに評価が上がっていったのです。
ご参考までに。

そういえば、大森さんが「京大生の日常をそのまま描くと、よその地方の人からはファンタジーに見えてしまう」という名言を吐いていました。
Posted by 高橋ま at 2007年08月25日 08:22
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