この文庫版『詩経』の前身となったのは、日本評論社の東洋思想叢書版『詩経』だそうで、それの刊行が昭和十八年。「すでに戦争末期に入り、用紙も不足しており」との序をみれば、そうした中での学業・研究の継続がいかに困難であったかが偲ばれます。
そんなわけで、学説的にはもっと最新のものが、いくらでもあるのだとは思います。まえに読んだ白川静氏の『詩経』だって、なんぼか新しいはず。
おもしろいのは、本書の訳文。詩経の原文からすれば読み下し文や、そこから平易な日本語への訳がおこなわれるかと思いきや、これが「五、七」などの日本語っぽい調子でととのえられているのですね。
咲いたむくげの華のよな
可愛い娘と合乗りで
ゆけばゆらゆら佩玉(たま)かざり
きれいな姜(ジアン)の姉むすめ
ほんにきれいでみやびてる(p.17)
……と、こんな具合。たしかに姜に「ジアン」とルビをふるあたりが日本語ではないなと思う程度で、それがなければ、元が漢文とは誰も思わないのでは。
おかげですいすい読めて、楽しい読書でした。
詩経
著者名:目加田誠(著)
出版社:講談社
出版年:1991.01
ISBN :9784061589537
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