戦国日本を舞台に信長を古代シリアの太陽神崇拝と結びつけた『信長』、秀吉(というより、その甥)をグノーシス主義と結びつけた『聚楽』、そして光秀を松永久秀と、暗殺教団として伝説に名をのこす「山の老人」と結びつけた本作『黎明に叛くもの』で戦国時代三部作ということでしょうか。
もっとも、一作ずつは独立した作品なので、どれから読んでも問題ありませんが。
わたしの好みでは、『聚楽』の方が上かなぁ、という気はします。完成度が高いと感じます。
でもね、これカッコイイんですよ。もうタイトルからカッコイイし。『黎明に叛くもの』ですよ? なにそれ。カッコイイ! とにかくカッコイイ! 問題は、このタイトルが示す概念がかっこよすぎて、物語の精緻な結構を払いのけてしまうほど強い印象があること、なのかもしれません。
解説もうまいなぁと思いつつ、あれ、このお名前には覚えが……と思ったら、『ねこのばば』文庫版の解説を書いてらしたかたですね。末國善己氏。自分の過去感想文を検索したら、そのときも感心したらしい一文を発見。
黎明に叛くもの
著者名:宇月原晴明(著)
出版社:中央公論新社
出版年:2006.07
ISBN :9784122047075
本家サイト感想文リスト
※追記:タイトルの「もの」を間違って「者」に変換してしまっていたので、とりいそぎ訂正しておきました。どうしてこう、うっかりミスが多いのか! ……すみません。

私も作品としてのまとまりは圧倒的に『聚楽』の方が好みなんですが、『黎明に叛くもの』は何と云いますか、一冊を通じて松永久秀の美学が語られている分だけ色々と印象深いものがある作品なのかなと感じています。
御存知かとは思いますが、同じ中公文庫にて外伝の短篇をまとめた『天王船』も刊行されています。
こちらは『黎明〜』よりも本文がみっちりしていないし、薄いので(内容は濃いんですが)、読む際に物理的な困難が伴わないかと思いますー(笑)。
宇月原作品を誰かに勧めるなら、とりあえず『聚楽』かなぁと思いますが、作品としてのこう……敢えていうなら、いびつさのようなものが感じられるからこそ逆に、『黎明に叛くもの』は、読者をガッチリ掴む力があるように感じます。
『天王船』は、すでに入手済みですので、これから楽しみに読みたいと思っています。
『黎明に叛くもの』を買おうとしたとき、外伝が文庫版には入っていないということを知りまして。それで悩んでいたところ、羽鳥さんのブログの方で外伝が別途文庫化されたという情報を拝見し、それなら本編も文庫で買ってしまえと……。まさか、こんな並外れた文庫だとは思いませんでしたが!
最近の文庫は、厚みも価格もあなどれないことが、勉強できる一冊でした。でも「好きな一冊」にもなったので、結果オーライです!