2007年02月25日

読了メモ:ガラスのなかの少女

 書店店頭で目にとまり、なんとなく気になって購入。心霊現象など微塵も信じていない詐欺師が、自分が用意した降霊会の最中、幽霊(としか思えない少女の幻影)を見る、という状況設定にやられました。
 信じていないからこそ、その出来事を追求せねばならない。なぜ、なにが、どうして。

 中身は期待に違わぬ、いや期待以上の出来でした。素晴らしい。
 時代設定は、第一次大戦後、第二次大戦前。主人公は、その天才的な詐欺師、フェル シェル(※2007-04-12訂正。以下、間違っていた部分は全部訂正しておきます)の弟子であり助手であり養子でもあるメキシコ不法移民の少年、ディエゴ。ボディ・ガードをつとめる巨漢、アントニー・クレオパトラ(もちろん偽名)と三人で「チーム・降霊会(もちろん作中でそんな名称がもちいられているわけではありません。為念)」を組んでいるわけですが、その詐欺っぷりの描写も、かれらのバブリー(死語)な暮らしぶりも、なにもかもが素敵。

 もちろん、保護されるだけの側から一歩抜け出そうとし、成長するディエゴ少年もいいし、頼りになる相棒アントニーも、最高に味のあるキャラクターなのですが、やっぱりシェルがかっこいい! 伝説的な賭博師「魔術師」ジャックを父に持ち、みずからも父譲りのトリックと卓抜した洞察力、推理力、そして行動力を兼ね備えた――しかし、それを誇らない人物なんですよ〜。

 作品自体も、昔のことを語りながら、今の社会にも通じるいろいろな問題を、さりげなく浮き上がらせて見ているように感じました。
 押しつけがましくはなく、しかし、すべてがそこは提示されている。種も仕掛けもありませんよとカードを広げて見せる、優雅さがある。シェルが体現しているような、なんといえばいいのかなあ……「美学」? そういうものを、感じました。

 イザベルの幽霊談もよかったなぁ。「これをお持ち」が、まさか直後にもう一回効いてくるとは。
ガラスのなかの少女

著者名:ジェフリー・フォード(著)
田中一江(訳)
出版社:早川書房
出版年:2007.02
ISBN :9784151768019

 本家サイト感想文リスト 63870 ジェフリー・フォード
posted by うさぎ屋 at 17:17| Comment(4) | TrackBack(1) | 小説
この記事へのコメント
高橋は同じ作者の『シャルビューク夫人の肖像』を最近読みました。
19世紀末のニューヨークで「姿を見ずに肖像画を描いてほしい」という奇妙な依頼を受けた画家を描いたもの。世紀末の景色のなかで幻想と論理が調和しているかなりいい話でした。
Posted by 高橋ま at 2007年02月27日 09:05
 この作家さんは、いいですねぇ。他の作品も読んでみたいと思います。
Posted by うさぎ屋 at 2007年02月27日 11:05
そうですね。国書刊行会から出ている『白い果実』『記憶の書』というウェルビルトシティ三部作(のうちの2冊)も気になりますよね。
前者は山尾悠子訳で話題になりましたっけ。
Posted by 高橋ま at 2007年02月28日 12:52
 すんごく気になってますが、国書刊行会だから文庫にはならないと覚悟して買うしかないんでしょうか。
『シャルビューク夫人の肖像』はランダムハウス講談社なので、気長に待つ構えですが、まだ出てから一年たってませんからね〜……。遠いわ〜。
Posted by うさぎ屋 at 2007年02月28日 16:47
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[読了]ジェフリー・フォード、田中一江『ガラスのなかの少女』と教養小説
Excerpt: 世界幻想文学賞にノミネートされた『シャルビューク夫人の肖像』の著者の作品で、アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀ペイパーバック賞を受賞したのが本作である。 詐欺師のシェル、そのパートナーのアントニー、そし
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