著者の解釈や説明を読んでなるほどと思いつつ、そういう「教養」抜きにして、たぶん現代人ならではの語感や語彙の違いから来る「誤解」も見逃すことにして、あらためて詩句自体を見てみるとどうか? とか……そんな読みかたしてたら、えっらい時間かかりました。
非常によく知られた歌ですが、やはり
遊びをせんとや生(うま)れけむ
戯(たはぶ)れせんとや生(むま)れけん
遊ぶ子供の声聞けば
我が身さへこそゆるがるれ(三五九)
(p.19)
いい歌だなぁ、と思います。漠然とした「無常」というか、「無我」の境地に似たものを技芸(あるいは遊芸)の道に見出し、これが本分だと心の底から考えるのではなく感じてしまって、心より先に身体が動いてしまう、動かされてしまう、というような情景が浮かびます。勝手な解釈ですけど。
もちろん、本書のキモである「教養」の部分もすごく面白いですよ。単に詩句だけがつづいていたら、読むのに時間がかかり過ぎて投げちゃうんじゃないかと思うのですが、一句ずつ時代の背景を、あるいはその後の展開を、または過去を、特定の個人を……と結びつけた内容が興味深いので、読み通すことができたと思います。
とくに『梁塵秘抄』の撰者である後白河院の今様への傾倒ぶりなど、歴史の流れのなかにおける「今様」というか、……違うなぁ、「今様」を読んでいくうちに、それを集めた後白河院に意識が届き、時代がその後どう動いていったかに想到してまた時間がかかっちゃうというか……。奥深いので、覗きこむほどに底の暗さと遠さを知る感じ?
や、読みづらい本ではないです! おもしろかったです。
梁塵秘抄
著者名:西郷信綱(著)
出版社:筑摩書房
出版年:2004.10
ISBN :4480088814
