ホラー、と銘打たれているのを、もっとちゃんと認識しておけばよかったな、というのが最初の二編ほどを読み終えたところでの感想。「アイルランド」とか「幻想」とかいうキーワードに流されて、ついそういうものを期待してしまったのですが、よくできたホラー短編集です。
つまり、どこまで読んでも「イヤ〜ン」な感じに終わります……。
それはまあ、ホラーだからしかたないのですが(ほとんどのホラーはそうだから。たまに例外的に、よりエンターテインメント性に傾斜した「読み終わったら元気になれるホラー」というのもある気がするけれど……まあこのジャンルもわたしはそう詳しいわけではないので、そういう印象がある、程度の話です)、この著者の場合、拭いがたくアイルランドに落ちる歴史上の暗い影が強くて重くて。
超自然の怖さよりも、人間の駄目さとか恐ろしさとかが目立ってしまっている、といえばいいのかな。
それとも関係するのですが、『蜘蛛の巣』を読んだときにも感じた、「啓蒙してます」という雰囲気が、ちょっと苦手かなぁ……。『蜘蛛の巣』は歴史小説というカテゴリ上、説明が多くてもそんなに不思議はないのですが、ホラーなのだから、怖がらせる方を主眼においてくれればいいのにな、と思いました。
またゲール語が太字処理されているのも、わたしはひっかかりました。
さんざん文句を書きましたが、上の方で「よくできた」といっているように、悪い本ではないのですけど……合わないのかなぁ、この作家さん。でもフィデルマのつづきは読みたいのよ!
ところで、「深きに棲まうもの」は、クトゥルーですよね? ケルト伝承とからめてこれをやる人がいるとは思わなかったので、びっくり! 技ありの一本で、わたしはこれが好きかな。頭のいい書き手だと思うせいか、冴えた発想が感じられる作品が好きです。
アイルランド幻想
著者名:ピーター・トレメイン(著)
甲斐萬里江(訳)
出版社:光文社
出版年:2005.08
ISBN :4334761577
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