「共感覚」というのは、事物に五感からなるさまざまな感覚が付与されて感じられる能力のことです。……といっても意味不明でしょうし、わたしもテレビで(たしかNHKのどれかのチャンネルでやっていたドキュメンタリー番組で)ちらりと見た程度の知識しかないので、うまく説明できないのですが。
ひとことで言えば、この小説のタイトル自体がそれです。月曜日は赤。
主人公は「月曜日」という単語を聞いただけで、べったりと赤い色彩を連想します。月曜日という単語と赤という色が、不可分に結びついているわけです。これが共感覚。一説によれば、人は誰しもこうした感覚をそなえているはずなのですが、成長にともなって次第に消えていくとか……どうなんでしょうねぇ? 自分の記憶をひっくり返しても、そんなビビッドな世界を生きていた気はしないのですが。
ともあれ、髄膜炎からの回復を機に共感覚の持ち主となった少年が、視界の片隅にうずくまる悪魔(?)のような存在に、つねに介入されるようになるという……気が狂いそうな話です。なにしろこの化け物、感じるだけでなく、その感じたことを確実に、しっかりイメージして言葉にすれば、なんでも「思うがままに現実を改変できる」と主人公を唆すんですから。
読者のかたにしか通じない話で恐縮ですが、『真世の王』の古い言葉でやっていたようなことを、現代のふつうの少年が、いきなりやらされそうになっている……みたいな感じです。謎の化け物ドゥリーグは、主人公のルークにとって誘惑者にして共犯者、しかも鬼コーチ。
ものすごくよくできた本ですが、敢えて欠点をあげれば「出来過ぎ」かなぁ……。
でも、すごいです。とくに、共感覚の表現が。含有するイメージの豊富さ、鮮烈さ、立体的にたちあがってくる空間の豊饒さ。この文章自体を味わう作品なのでしょう。作者自身が、冒頭に書いているように。
8月末に、長いこと積んでおかずに、読んでしまいたいとか書いてますが、かなり積んでましたね……。でも読めてよかった!
月曜日は赤
著者名:ニコラ・モーガン(著)
原田勝(訳)
出版社:東京創元社
出版年:2006.08
ISBN :4488013252
