2006年09月10日

一人の王にさしあげる玩具

 複数のブログで絶賛されていたので、買ってみました。相互に関連のない短編集で、どこか昔話やおとぎ話の雰囲気があります。つまり「むかしむかし、あるところに」っぽく、いつ、どこ、という前提が、いい感じに曖昧。
 リアリズムびっちりの作品は、それはそれで素晴らしいものなのですが、たまに疲れ果ててしまうことがあります。なればこそ、「むかしむかし〜」で許される長閑な世界に親しみたくもなるわけで、そういう気分の人にはオススメかな。

 表題作は、砂漠とラクダの世界。部族間の骨肉の争いに巻きこまれて育たざるを得なかった、王の一族の少年と、部族の長となるべき少年の物語。

「ある幸福なひとの噺」は、「むかしむかし」ではなく、仮想現代。ローマが滅びず「ローマの平和(pax Romana)」がつづいていたら……という設定で、奴隷制がまかり通っている世界が舞台。闇ルートで流されたケルト蛮人の少年が、変わり者の芸術家に拾われて……と、これは人形ネタでもありますが、人形者的にはどうなんだろう。わたしも人形は好きなんですが、ちょっと「好きかた」が本流からはズレているような気がするので、なんとも。

「さまよえる王の噺」は、世界半分滅ぼしかねない戦を止めるために禁術を発動させ、自分の国を吹きとばし、以来瓦礫となった自分の国土にさまよいつづける王を、裁けるのか……という話。おとぎ話というより、寓話っぽい設定ですね。

「修道士イーディルカンと二人の傭兵」は、同じ顔をした傭兵二人組に拾われた、見習い修道僧の冒険(?)譚。このお話が個人的にはいちばん好きかなと思うのですが(理由? それはわたしが中古でも乙女だからではないでしょうか……あと視点人物であるイーディルカン君が、文字書きなのも大きいかも?)、如何せん、傭兵二人が同じ見てくれという設定なので、どっちがどっちなんだかサッパリ。読んでいる最中、見分けを完全に諦めました。でも、これを書きながら読み返してみたら、バッチリでした。結末を知っているから見分けられるようになったのか、……いや、単に読んでるときに諦めたのが悪いんだ。ちゃんと読めばわかるように描かれてました! うぇーん。(←なぜ泣く?)

 最後に収録されている「玩具の頃」は、表題作の番外掌編。後日譚になるのかな。六ページなので、雰囲気スケッチのような感じです。

 とりあえず、満腹〜。
一人の王にさしあげる玩具

著者名:吟鳥子(著)
出版社:新書館
出版年:2006.02
ISBN :440361826X

 余談。よそさまの感想サイトなりブログなりでとりあげられてて「おっ?」と思った本は、とりあえずオンライン書店のカートに放りこんでしまいます。
 だから、オンライン書店のカートはいつも「とりあえず放りこんじゃえ」な本でいっぱいで、急いで必要な本を買うときに合計金額を見て「うわ」と青ざめ、あわてて整理します。今回も、はっと見たら二万円近くてですね……ずいぶん減らしました。物欲おそるべし。
posted by うさぎ屋 at 15:03| Comment(2) | TrackBack(0) | 漫画
この記事へのコメント
おお、読まれましたか。独特な世界を描かれる漫画家さんでしょう。いま、これだけの世界観を1話完結で描ける漫画家さんは少ないのではないかと思います。月刊ウィングスに不定期連載中の《鎖衣カドルト》というシリーズがあるのですが、これがまた非常に独特で、いろいろと奥深く考えさせるものを含んでいるのでお勧めですよ〜。

作者さんには去年雑誌の挿し絵をお願いしたという縁でサイトにリンクさせて頂いています。愛鳥ジャスパさんの鳥日記が可愛いですよv
Posted by しまだ at 2006年09月10日 16:07
 読みました〜。感想でふれるのを忘れましたが、絵柄がとても素敵ですね。
 しまださんが書かれる世界にも、似合いそうです。

 鎖衣のシリーズについては、帯で言及されているので気になってましたー。やっぱりおもしろそうですね。単行本にまとまったら読んでみようかと思います。
Posted by うさぎ屋 at 2006年09月10日 18:50
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