エラントリスとは、かつて栄華を誇った都の名前。しかしある日、その魔法に満ちた力はすべて裏返り、かがやいていた民は死体のような姿となり、美しかった都は汚濁にまみれ、朽ち果てていった……誰もがふれたがらないエラントリスのすぐそばにある新しい都に、ひとりの王女が嫁いで来るところから物語は始まります。いやその前に、彼女が嫁ぐべき相手が突如「変容」に襲われてエラントリスの民と化し、人知れず王宮を放逐されるところから。
いやぁ、おもしろいです。最近わたしがよく愚痴っているような、「無駄に分厚い」感じがしない、いい展開ですよ、少なくとも上巻はそう。
ただ、「25歳で行き遅れとみなされているお姫様」とか「突如賤民の身分に落とされてしまった王子様」とかよりも、「異教徒の国を従わせるために派遣された司祭、論理的で狡智に長けているが、情熱がない……」とか、「汚濁の中で発狂することを受け入れそうになっていた異国の男」とかいう、ちょっと年上脇役の方につい感情移入してしまうのは、わたしがもう中年読者だからでしょうねぇ。
でも、そうした「脇」もすごくよくできているということの証左にほかならないですよね。下巻を読むのが、楽しみです。どんな風にまとめてくれるのかな。
エラントリス鎖された都の物語 上
著者名:ブランドン・サンダースン(著)
岩原明子(訳)
出版社:早川書房
出版年:2006.08
ISBN :4150204225
