冒頭から少しを読むと、後の「殺生関白」にして秀吉の甥、豊臣秀次の出自を作者がここでどう見立てたか、がわかります。
それがわかると、ああなるほど、では後年のあのエピソードはこういう風に、あれはこう、これはそう、なるほどなるほど、うわー! と視界が開けていくような心地で、実におもしろい。ちょうど『功名が辻』を一気読みしたあとだったのも良かったと思います。なにしろ、あれは信長から秀吉、家康と主君を渡り歩いた武将(と、その妻)の一代記、しかも著者が史料にこまかく言及する司馬遼太郎氏なので、「ああ、あの史料をこう使うんだ!」とわかるわけですよ。
秀次のどこかちぐはぐな行動や、秀吉の老耄をあらわすかのような愚行の一切が、この「見立て」で解釈され尽くした風なのは、まさに圧巻。
ただ、その「見立て」のおもしろさが、戦国日本側には強烈に感じられるのに比して、錬金術および異端については知識が中途半端なので、「ああ、あれが!」感が薄かったのは残念なことでした。む〜ん。まだまだ修行がたりませぬ。
本書の感想というのとはちょっと違う気もしますが、『功名が辻』つながりでいうと、一豊こと伊右衛門が秀次のもとへ行くというエピソードを記憶していたので、それをどう使うのかとワクワクしながら読んでいたところ、スッポリと抜け落ちていたのが残念でした。
『信長』よりいっそう伝奇寄り、といっていいのかな? とにかく、すごい作品でした。
聚楽 著者名:宇月原晴明(著)
出版社:新潮社
出版年:2005.10
ISBN :4101309329
