もともと、買いに行ったらば近所の書店には『聚楽』しかなく。『聚落』を買っては来たけど、やっぱり『信長』から順番に読みたいな、と思って今に至るわけです……。
いやまあ、そんな事情はともかく、出先でうっかり読みふけってしまうほど、おもしろかったです。
詩人、アントナン・アルトーのもとへ、謎の東洋人があらわれて、信長はヘリオガバルスが信奉したバール信仰を中世日本によみがえらせた者であり、対になる存在である……というようなことを匂わせると。あの史料も、この史料も、「そういう目で見ると!」と辻褄が合ってしまう面白さ。これは素晴らしい。
アルトーの手稿と見なされるパート、そしてそのアルトーが生きた1900年代初頭のパート、そして戦国日本。この各パートが絡み合って、複雑精妙な世界が構築されていく逸品です。
わたしは著者が巻末に挙げた参考文献のなかで「特に」多くを拠ったとしるしている中の二冊、『ヘリオガバルス または戴冠せるアナーキスト』を読んでいるし(→感想、山本ひろ子氏の牛頭天王研究が収録されている(と思う)『異神』も上下巻の上巻は全部読んだのですが(感想なし。ちょうど感想文をサボっている時期でした。『中世神話』の方は感想文があるけれども、これは「神話の書き換え」に力点が置かれていた本だったような記憶がうっすら……うーん、ちょっと自信ナシ。でも「牛頭天王」についてだったら、『異神』じゃないかなぁ)、このふたつを結びつけようという発想はまったく浮かびませんでした。
というか、ふつう浮かばない。ですよね?
著者の発想の妙、そしてそれを見事に構築する手練のわざに、まことに感服つかまつりました次第。
信長 著者名:宇月原晴明(著)
出版社:新潮社
出版年:2002.09
ISBN :4101309310

それはさておき、『信長』お読みになられたのですね! 私は最新作の『安徳天皇漂海記』から著者の作品を読み始めて、デビュー作から遡ってみたのですが、デビュー作からこれなのか……とびっくりでした。戦国時代パートは本能寺までの引っ張り方が凄くて、とにかくもうそこまではぶっ続けで読んでいたような記憶があります。
『聚楽』も広範な知識をふんだんに詰め込んでいる割には思っていたより読みやすくて、無関係である筈の事柄を結びつけていく力技も華麗でした。
ファンタジー好きとしては最新作の『安徳天皇漂海記』がずいぶんツボだったので、文庫化の際には是非こちらもお手に取って戴きたいな〜と思います。現実と幻想が入り混じり、さらには幻想の方が現実を圧倒していくクライマックスにはもう呆然としてしまいました。読後感も良かったです。
長い書き込みにて失礼致しました。
またお邪魔させて戴きます〜。
羽鳥さんが紹介してくださったおかげで、『信長〜』の文庫化に気がつきましたです。遅い出会いですが、『フロイス日本史』もそのあたりは読んでいたし、ちょうどよかったかな、と思いました。
『フロイス〜』を読んだときに、和田殿が、和田殿が! と騒いでいた和田殿も、ちゃっかり『信長〜』に登場なさっているのを(チョイ役ですけど)みつけて、なんだか嬉しかったりとか。
『聚落』もいま読みかけていますが、ああ、この設定だとすると、あそこのエピソードはこう見立てるのか、なるほど、するときっとあそこはアレか! と、勝手に盛り上がって楽しいです〜。
『安徳天皇漂海記』も、とてもよさそうなので、いずれ文庫落ちしたら……すぐ気がつけるといいのですが。
今後もすてきな本を紹介してくださいね。楽しみにしてます。