でも、小説は小説でおもしろいんですよね。
なにしろ、本能寺の変を
本能寺ノ変が起こった。
信長は死んだ。(p.17)
これで一報をかたづけてしまうなど、並みの作家にはできませんよ。どうやって伝わったかとか、あるいは本能寺でどうだったかとか、そういったアレコレを書きたくなって当然なのに、二行です。二行。そのあと秀吉の陣地では秀吉しか知らなかったというような説明が入り、使者は監禁されたというところまで含めても四行。
やはり、この作家の魅力は、こうした徹底した「今はここに焦点をあてている」という意志の強さ、ならびに「かくあってしかるべき」という事実性の緻密な検討と記述の説得力、そしてそれらを産み出す透徹した歴史感覚なのでしょうねぇ。
小説ではなく、あくまで「歴史小説」なんだと思います。さすが、の感があります。
功名が辻 2 新装版 著者名:司馬遼太郎(著)
出版社:文芸春秋
出版年:2005.02
ISBN :4167663163
