おもしろいのは、新しい土地に入って行くにあたり、やたらと妻を「妹です」と偽ることですか。なにもそんなに何回も嘘つかなくても、と思いました。そして毎回、相手にバレて責められます。
そんな愉快な様式のくり返しに満ちた聖書ですが、読むこと自体はそんなに困難ではありません。なにしろ世界中の人が読んでるわけですし、そう読みづらいもののはずがないわけです。
辻褄が合わなかったり、人名が多過ぎて混乱したりしますが、後者は神話によくある系図関連の部分なのでとくに聖書のみの問題ではないでしょう。でも前者は、ふつうの神話のような「ああ、まぁ神話だから理不尽でもオッケー?」とかたづけられる話ではなく、この部分は傾向からしてエロヒストの手になる文章、こっちはヤハウィスト、こっちは祭司資料……と、徹底的に分析されていることです。
これをみると、世界各地の神話も、実はさまざまな「代表的編者」が何回か手を入れ直した結果、おのおのの信条に応じた情報の取捨選択がなされて、それをまとめて後世に伝えたところ、若干ゆかいな展開になった……なんてことがあったのかも、と考えてしまいます。
口碑の担い手にもそれぞれ個性があって、ただただ完璧に覚えて次に送る人、覚えてるけど意味わからんのでウッカリ抜け落ちたり混乱がある人、はたまたつい調子こいて話を作っちゃう人、など、いろいろパターンがありそうですし。
旧約聖書 創世記 著者名:関根正雄
出版社:岩波書店
出版年:2003.05
ISBN :4003380118
