なつかしくなって読み返してみましたが、やはり、胸が痛くなるように好きな本だなぁ、と思いました。
物語は、男の子二人、女の子二人の四人兄弟が主人公の、典型的な英国児童文学系ファンタジーです。ほんの偶然から、男の子のひとりが「望みのままの場所へ連れて行ってくれる魔法の船」を手に入れ、兄弟がそれに乗って地域や、時代さえ超えて冒険をする話です。エジプトのファラオに会ったり、ノルマン人侵攻時代の英国でお姫様と友だちになったり、いかにも楽しそうな冒険ですが、つねに命の危険と隣り合わせのあやうさをにおわせます。
著者が歴史小説畑の人で、もとは自分の子どもに語り聞かせた物語に端を発したというこの物語は、時間の壁がかたちづくる「ギャップ」を雄弁に語り、また、すべてを飛びこえる船の魔法さえ、万能ではないことも教えてくれます。魔法は、いつまでも手元に留めてはおけないことも。
歴史物語に「遥かな時代のかなた」を見出し、そのギャップ、過ぎ去って二度と戻ることのない光のきらめきを感じるタイプの読者であれば――あくまで児童文学ではあるので、「児童文学向けチャンネル」にチューニングできる能力も必要かもしれませんが――この物語は、たぶん、せつなくも得難いものと感じられるのではないかと思います。
とぶ船 著者名:ヒルダ・ルイス
石井桃子
出版社:岩波書店
出版年:1966.11
ISBN :4001108224
しかし、1966年って。わたしが生まれた年ですよ。
