そもそも『淮南子』がどういうものか知らないというレベルの読者であるわたしにも、じゅうぶんに興味をもてる本に仕上がっていて、思索のみちびきかたや結論のだしかたもいいんですけど、文章のたくみさに酔いました。端正で無駄がないのに、はっとするような表現もかいま見えるのですよ。
淮南子の思想 著者名:金谷治
出版社:講談社
出版年:1992.02
ISBN :4061590146
読みものとして、前半の「淮南王物語」の部分は『淮南子』という書物が編まれた時代背景、そのパトロンであり登仙伝説もある淮南王とは何者だったのかをといて、非常におもしろいです。
時代の趨勢に流され、周囲の期待に押されて、謀反をたくらまざるを得ない位置に生まれ、育ってしまった悲運の王。その英才ぶりは広くとどろき、だからこそ儒教を重んじる朝廷では居場所を得られない異才の者たちが集まったという流れは、ああ、なるほどなぁ……としぜんに納得できるものです。
みずから選んだのではなく選ばされた、さからいようもなく押し流されたように見える文人王の悲劇は、陰謀の疑いすらある暗いものです。いやー。ツボにはまりましたー。
