でも読んでみたら、たしかに切なさもあふれてたし、ヒューマン・ファンタジーではありましたよ。長編に比べると、肩の力がちょっと抜けた感じで、いい意味で物語の流れにまかせて筆が進んでいるというか。
殻都市の夢 著者名:鬼頭莫宏
出版社:太田出版
出版年:2005.11
ISBN :4778320042
収録作品タイトルは以下の通り。
- 誕生日の棺
- 3年間の神
- 生死者の聲
- 媚薬水の味
- 座敷童の印
- 造物主の檻
- 渉猟子の愛
殻と呼ばれる構造体を重ねに重ねて築かれた都市を舞台にした連作です。エッチ・シーンもありますが、基本的に成人男性×少女なので、そういうのが苦手な人は避けてください。
発達した科学と停滞した社会、満たされぬ心とふれあえぬ個人。とか説明すると、わかっちゃったような気になりますが、例によって語りきれた感はないです。
いつも思うのですけど、このかたはデッサンが独特ですよね。骨格が見えそうというか。描線は枯れた感じで、細い線を重ねて描かれていて、カサカサとした印象です。ひとめで「あ、あの人の絵」とわかる個性があるのは、強みですよねぇ。
本の内容を片端から暗記しちゃってる少女がでてくる「渉猟子の愛」が好きかなぁ。どの話も淡々としていますが、表面の演出がおさえめなだけに、背後に押しこめられたものが深そうな印象が残ります。「座敷童の印」もなんか好き。
一般人にすすめるなら「生死者の聲」かなぁ。
長編よりは気軽に読めますし、著者の作風はなんとなくわかるかと思うので、
「気になる作家だけどまだ読んだことがない」
なんて人に、じゃあとりあえずコレ読んでみれば? って勧めやすい一冊ではないかと。
