一気にぐいぐいと読ませる作品でした。
群像劇であり、政治劇で、うまいこと作られております。三人のキャラクターを別々の立場に配することによって、Aに見えているものがBとCにはわからない、Bの思惑をはずそうとするDの存在が、Bの陰に隠れてしまってAとCにはわからない、Cの目指すところが見えないまま、Bの目論見を阻止する為にAが動いてしまってCピンチ! といった感じ。
これは伏線だろうなぁと思っていたものが後から生かされて「ヤッパリ!」とか、思いも寄らぬ伏線もあっておどろいたりとか、そういう話です。
ファンタジー的には、「都市」という、解説の新城カズマ氏も指摘なさっているオイシイ設定を使いながら、いまいち神秘性が盛り上がらないのが気になりました。アオン文字は形としてはなかなか綺麗ですし、設定もおもしろいんだけどなぁ。
これは好きずきというか、個人の趣味の問題のような感じですけど。
失われたエラントリスの民である、銀色の肌でピカピカ光ってる人たちが、すごい力をもちながら、ほとんどふつうの人みたいな印象しか残さないのがいかんのかな……。なんかこう、ほんとに元は一般人だからしかたないんですけど、どこまでいっても、あんなすごい力をもちながら、エラントリス人はすごく人間っぽい。
それは釈然としない、とわたしは思うのですよ。ちょっとした世俗の権力をもっただけで、人ってすごく変わるでしょう。あれだけの超常能力があれば、考えかたからなにから、まったく違っていただろうと思うんだけど。そういう雰囲気が、少なくともわたしは感じ取れなかったので。そこが残念です。
ちなみに読みながら贔屓していたキャラは、ロイヤル、サオリン、エオンデル、ホラゼン、そしてガラドン。ってところですか。おっさんばっかりですな……。ネタバレになるので書けませんが、以下略。ううう。
エラントリス鎖された都の物語 下
著者名:ブランドン・サンダースン(著)
岩原明子(訳)
出版社:早川書房
出版年:2006.08
ISBN :4150204233