2006年08月31日

読了メモ:エラントリス 下巻

 上巻にひきつづき、読了でございます。

 一気にぐいぐいと読ませる作品でした。

 群像劇であり、政治劇で、うまいこと作られております。三人のキャラクターを別々の立場に配することによって、Aに見えているものがBとCにはわからない、Bの思惑をはずそうとするDの存在が、Bの陰に隠れてしまってAとCにはわからない、Cの目指すところが見えないまま、Bの目論見を阻止する為にAが動いてしまってCピンチ! といった感じ。
 これは伏線だろうなぁと思っていたものが後から生かされて「ヤッパリ!」とか、思いも寄らぬ伏線もあっておどろいたりとか、そういう話です。

 ファンタジー的には、「都市」という、解説の新城カズマ氏も指摘なさっているオイシイ設定を使いながら、いまいち神秘性が盛り上がらないのが気になりました。アオン文字は形としてはなかなか綺麗ですし、設定もおもしろいんだけどなぁ。

 これは好きずきというか、個人の趣味の問題のような感じですけど。
 失われたエラントリスの民である、銀色の肌でピカピカ光ってる人たちが、すごい力をもちながら、ほとんどふつうの人みたいな印象しか残さないのがいかんのかな……。なんかこう、ほんとに元は一般人だからしかたないんですけど、どこまでいっても、あんなすごい力をもちながら、エラントリス人はすごく人間っぽい。
 それは釈然としない、とわたしは思うのですよ。ちょっとした世俗の権力をもっただけで、人ってすごく変わるでしょう。あれだけの超常能力があれば、考えかたからなにから、まったく違っていただろうと思うんだけど。そういう雰囲気が、少なくともわたしは感じ取れなかったので。そこが残念です。

 ちなみに読みながら贔屓していたキャラは、ロイヤル、サオリン、エオンデル、ホラゼン、そしてガラドン。ってところですか。おっさんばっかりですな……。ネタバレになるので書けませんが、以下略。ううう。
エラントリス鎖された都の物語 下

著者名:ブランドン・サンダースン(著)
岩原明子(訳)
出版社:早川書房
出版年:2006.08
ISBN :4150204233
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2006年08月30日

読了メモ:エラントリス 鎖された都の物語(上)

 近所の書店さんで発見。あっ、これはちょっと前にチェックしてた本じゃないですかうわー一冊920円でも読みたいほしい買う! というわけで、上下巻を揃えてゲットですよ。上巻だけで500ページ以上あります。剛毅です。というか、造山運動が激し過ぎて、崩しても崩しても……。

 エラントリスとは、かつて栄華を誇った都の名前。しかしある日、その魔法に満ちた力はすべて裏返り、かがやいていた民は死体のような姿となり、美しかった都は汚濁にまみれ、朽ち果てていった……誰もがふれたがらないエラントリスのすぐそばにある新しい都に、ひとりの王女が嫁いで来るところから物語は始まります。いやその前に、彼女が嫁ぐべき相手が突如「変容」に襲われてエラントリスの民と化し、人知れず王宮を放逐されるところから。
 いやぁ、おもしろいです。最近わたしがよく愚痴っているような、「無駄に分厚い」感じがしない、いい展開ですよ、少なくとも上巻はそう。

 ただ、「25歳で行き遅れとみなされているお姫様」とか「突如賤民の身分に落とされてしまった王子様」とかよりも、「異教徒の国を従わせるために派遣された司祭、論理的で狡智に長けているが、情熱がない……」とか、「汚濁の中で発狂することを受け入れそうになっていた異国の男」とかいう、ちょっと年上脇役の方につい感情移入してしまうのは、わたしがもう中年読者だからでしょうねぇ。
 でも、そうした「脇」もすごくよくできているということの証左にほかならないですよね。下巻を読むのが、楽しみです。どんな風にまとめてくれるのかな。
エラントリス鎖された都の物語 上

著者名:ブランドン・サンダースン(著)
岩原明子(訳)
出版社:早川書房
出版年:2006.08
ISBN :4150204225
posted by うさぎ屋 at 17:38| Comment(0) | TrackBack(1) | 小説

げんしけん 八巻

 八巻が家にあったので読みました。サークルで合宿でウハウハ(?)の巻。荻上さんの過去話など。
 荻上さんといえば「自分の中の腐女子属性とどうやって折り合いをつけていくか」問題なわけですが、うまいこと書いてあるなー、という印象。

 あと、読んでいて、「となりの801ちゃん」を思いだしました。

 わたしは腐女子属性がないのですが、まわりでオタク系女子といえば、当然の嗜みって感じでみなさんOKなので、けっこう当惑します。

 どれくらい属性がないかというと、うちの本家サイトのアクセス解析で、検索エンジンからの検索履歴に、指輪物語のキャラ同士の名前が「×」で結び合わされているのがあると、ほんとうに「やめてくれ……」と思うくらいです。もうどうにでもなれ。いや、嘘。ならないでください。たのみます。

 ちなみに、ページ内に「×」が含まれてなくても検索結果に出てきちゃうので、こちらでは、どうしようもありませんのですよ。ハイ。まー強いていえば、アクセス解析の結果を「見ない」とかね。そういうわけで、昔ほど頻繁には見ていないのです……。
63870七巻の感想
げんしけん 8
著者名:木尾士目(著)
出版社:講談社
出版年:2006.08
ISBN :4063211797
posted by うさぎ屋 at 17:27| Comment(0) | TrackBack(0) | 漫画

献本御礼:月曜日は赤

 ひぇー。またまたいただいてしまいました、東京創元社さま、ありがとうございます。
 今回はソフトカバーの書籍で文庫でもハードカバーでもありません。
 リンク先の概要を読んでもおもしろそうですが、帯の惹句も気になります。
月曜日は赤。悲しみには虚ろな青い匂い。
火曜日はオレンジ、薄いアンズ色のアイスクリーム。

少年が手に入れたのは、言葉で世界を変えることのできる不思議な力。

そして彼はひとりの少女に出会う……。

少年の成長と初恋を瑞々しく描いた
珠玉の青春ファンタジー

 わぁー。ツボっぽい! あまり長いこと積んでおかずに、読んでしまいたいと思います。
月曜日は赤
著者名:ニコラ・モーガン(著)
     原田勝(訳)
出版社:東京創元社
出版年:2006.08
ISBN :4488013252
posted by うさぎ屋 at 17:14| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

献本御礼:忌品

 太田さんから、お送りいただきました。いつもありがとうございます。
 今回いただいた御本は、短編集。「遺品」をテーマにしているそうで、開巻すぐに始まる文章でいきなり「老眼適齢期」とかいわれてトホホな感じです。そろそろやばいと思うんですよね〜。

 いや、そんなことはともかく。太田さんは話を「まとめる」のがすごくうまい書き手だとわたしは思っていて、だから長編でも短編でも同じようにお上手なんじゃないかな、と。短編集ということは、その「うまい!」が連続して味わえるわけで、お得な感じだと思います。
忌品
著者名:太田忠司(著)
出版社:徳間書店
出版年:2006.08
ISBN :4198507112
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2006年08月29日

読了メモ:デュラララ!! 三巻

 首無し騎士のアイルランド妖精、デュラハンが来日しっぱなし! しかもホントに首無し! という不思議な設定のシリーズ、第三巻です。毎度、チャットルームがいかにもな雰囲気でいいですね。だんだん面子の正体がお互いに割れてきたようですが、誰が誰の正体を知ってるんだか把握しきれなくなりそうです。

 例によって、前作について覚えていることといえば「セルティ異様にかわいくて最高」という部分だったりするわけで、今回もセルティはかわいくて最高でした。

 そうそう、いつもほど「群像劇ッ!」って感じではなく、わりとすんなりと、正臣メインの話かなぁ……と思います。
デュラララ!! ×3
著者名:成田良悟(著)
出版社:メディアワークス
出版年:2006.08
ISBN :4840235163
posted by うさぎ屋 at 16:50| Comment(3) | TrackBack(2) | 小説

2006年08月27日

月曜日、サービス一時停止だそうです

■ほんつなサービス停止日時
8/28(月)12:00〜20:00

 とのことで、暫し見られなくなるようです。
 わたくし、このブログについては記事のバックアップ等を一切とっておりません。一瞬、バックアップしといた方がいいかなぁ、と思いましたが、まぁ「消えたら消えたときで! むしろ自分で消すくらいで!」という勢いで始めたブログなので、なりゆきに任せたいと思います。

 あと、品切れっぽいと書いた『真世の王』ですが、「ほんとうに品切れかどうか」を確認するために調べまわった範囲は、amazon、bk1、楽天、JBOOK、紀伊国屋書店BookWeb、7&Y、e-hon、net@book です。JBOOKが「販売状況:販売中」となっております以外は、ほぼ注文不可。で、JBOOKはJBOOKで「販売中」というステータスの意味は
ご注文いただけます。 系列の文教堂220店舗・取次会社・出版社(メーカー)よりお取り寄せとなります。なお、お取り寄せの結果、品切れのご連絡をさしあげる場合もございますので、予めご了承くださいませ。

 こんな感じなのです。これはもう駄目だな、と思ったので、「品切れっぽい」という記事を書きました。

 す、すみません、たぶん間にあわないんじゃないかと……。や、間にあってくれることを、わたしも祈っておりますが。
posted by うさぎ屋 at 15:15| Comment(2) | TrackBack(0) | 日記

2006年08月26日

読了メモ:パラケルススの娘 4

 サブタイトルは、「緋袴の巫女」。読むのが遅くなり申した……。

 今回はちょっと時代を遡って、遼太郎くんの怖いお祖母様、たか女様が若かりし日のお話。クリスティーナとの邂逅を語って舞台は横浜、尊王の攘夷の倒幕のと日本が揺れていた時代。
 いやぁ、実におもしろかったです。

 クリスティーナとレギーネを目撃して「ファンタジー」の世界に入りこんでしまう視点人物の忍くんが、かつての遼太郎くんを思い起こさせたり。
 また、からくり武者轟雷を従えた多華と、少女人形レギーネを従えたクリスティーナが好対照をなしていて、この人たちは光と影の関係なんだなぁ、と思ったりもしました。

 あらかじめ、今後の人物配置がどうなるかは、わかってしまっている事件。それでも、ラストはせつなかったです。
パラケルススの娘 4
著者名:五代ゆう(著)
出版社:メディアファクトリー
出版年:2006.06
ISBN :4840115540
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2006年08月25日

『真世の王』品切れのようです

 不思議なんですけど、出版社から「あなたの本は品切れになりましたよ」といわれたことがありません。ビジネスなのですから、そのへんはちゃんとしてほしいものですが(とくに契約を結んでいない場合、出版権は版元が在庫しなくなったいわば絶版状態になってから何年で切れる、とかいう設定だったはず。記憶で書いてるので、正確かどうかはちょっと自信ないです)、まー報告しづらいのはわかるので、しかたないのかな。

 ちょっと前からそろそろなくなるんじゃないかな、とは思っていたのですが、アマゾンのアフィリエイトで簡単ストアがつくれるのに気がつき、自分のペンネームでフィルタリングすれば容易に「拙著ですよ」コーナー(しかも随時更新)が作れるなぁ、と思って、やってみたんですよ。
 そうしたら、『真世の王』に値段がつかなかったので、あー在庫してなくて取り寄せも不可になったんだ、ということがわかりました。
 ほかのネット書店もたいがい同様の状況なので、おそらく流通在庫で最後だと思います。

 今はネット書店で在庫が簡単にわかりますけど、そうなる前は、ほんとにわからなかったんですよね。いつのまにか品切れになってました、いつも。
真世の王 上
著者名:妹尾ゆふ子(著)
出版社:エニックス
出版年:2002.05
ISBN :475750702X
真世の王 下
著者名:妹尾ゆふ子(著)
出版社:エニックス
出版年:2002.05
ISBN :4757507038

63870作品紹介ページ
posted by うさぎ屋 at 16:52| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2006年08月24日

レイヴ(文庫版)1〜2巻

 積んである本を整理しようとしたら、出てきたので、なんとなく読んでしまいました。
 少年漫画だな〜! って感じです。

 五十年前、聖石レイヴと魔石ダークブリングをめぐる戦いがあり、四つにわかれて飛び散ったレイヴ。そのレイヴの一つを持っていた、先の戦争の英雄が、レイヴの後継者となるべき少年に出会った! というような導入部です。
 変な生き物(ex. レイヴの使いであるプルーとか)に、妙な味があっていいですね……。いいというか、変というか……ナカジマとか。

 レイヴを使えるのは世界にただ一人、というシンプルな設定はいいのですが、それに対するダークブリングの方がよくわかんないですね。そのへんが、もうちょっとクリアになっていてほしいかな〜。
RAVE 1
著者名:真島ヒロ(著)
出版社:講談社
出版年:2006.08
ISBN :4063703355
RAVE 2
著者名:真島ヒロ(著)
出版社:講談社
出版年:2006.08
ISBN :4063703363
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2006年08月23日

読了メモ:完訳フロイス日本史 五巻

 まだ読んでたのかと……いうくらい、間があいてますが、ちょっと移動がつづいたので、その時間を利用して読みました。やっぱり、おもしろいです。

 インドとの外交とか、朝鮮攻めとかいろいろありますが、この巻で「秀吉篇」は終わるにもかかわらず、フロイスの筆により秀吉の死についての文章はありません。
 かわりに、ほかの宣教師が書いた書簡が載っております。
完訳フロイス日本史 5 豊臣秀吉篇2
著者名:ルイス・フロイス(著)
     松田毅一(訳)
     川崎桃太(訳)
出版社:中央公論新社
出版年:2000.05
ISBN :4122035848
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2006年08月21日

読了メモ:煌夜祭

 あちこちの読書系ブログで評判が高かったので、わくわくしながら買ったのですが、積んでました……すみません。←誰に謝っているのだ。

 手に取ってですね、冒頭に目を通してびっくりです。
 な、なんか自分が書きそうな設定……。や、不遜と思われてもしかたないですが、拙作の作風(それも、前世紀末あたりによく書いてたようなの。今はどれも流通していないので……えーと、強いていえば現在、サイト上で同系列の「仮面祭」という短編をお読みいただけます)をご存じのかたには、うなずいていただけると思います。だって、年に一度の語り部の祭りに、仮面をつけた語り部たちが島主の館に集い、終夜、語りつづけるって設定ですよ。
 それで、ちょっとビビリました。

 つまり、自分が書きたい世界と近いということは、ものすんごく入れこんで読んだ挙げ句、ああ駄目だ絶対かなわない……で、どん底な気分になるか、「ケッ」ってなるか、どちらか極端な結果を招きがちなので。
 で、これはどちらかというと、どちらでもなく。強いていえば前者でした。

 ものすごくうまいです。イヤな新人さんだな〜、と思うくらいお上手。とくに、新人がこんなに破綻のない話を書いていいのか! と文句をつけたくなるくらい、勢いよりも熟練の手腕で読ませます……と思ったら、あとがきによれば、投稿歴がかなり長くていらっしゃるんですね。なるほど。納得。

 次回作のご予定もまた「わー、自分が考えつきそうな!」だったので、悶絶です。
 正直、勘弁してくれ。

 なんて馬鹿話はおいといて、根っこはエスエフ(というか、論理立ててほぼ大枠の説明ができる筋道を通す)発想のかただと思うので、本質は、実はすごく遠いですね。おもしろいなぁ。
 いやほんと、すごい新人さんです。感心しました。
煌夜祭
著者名:多崎礼(著)
出版社:中央公論新社
出版年:2006.07
ISBN :4125009481
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2006年08月20日

残り二冊

 一昨日本屋に行ったときに、買いそびれてました……。自分の馬鹿野郎! って感じです。
 ともあれ、ぐいぐいと残り二冊を読破。
 ええ。
 えええええ。
 えええええええ(エンドレス)ええ!

 こ、こんなところでまた終わってるのー!!

 ってわけですが、今度は自分呪おうにも、ここから先の単行本は出ていないので、どうしようもありません。
 しかし、うまいなぁ。もとさん、こんなすごいストーリーテラーにおなりあそばすとは(なんか偉そうなものいいですけど……)思ってませんでした、デビュー当時。もっと、ふわふわっとした雰囲気重視のお話を描く路線で、進まれるのかと。
 いい方向に予想が裏切られるのは大歓迎ですけど、つづきが早く読みたいです。じたばたしてます。
レディー・ヴィクトリアン 17
著者名:もとなおこ(著)
出版社:秋田書店
出版年:2005.12
ISBN :425319477X
レディー・ヴィクトリアン 18
著者名:もとなおこ(著)
出版社:秋田書店
出版年:2006.05
ISBN :4253194788

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2006年08月19日

読了メモ:魔法ファンタジーの世界

 訳業を何度か目にしたことがある、脇明子さんが書かれた本なので、これは読んでおこうかなぁ、と買ってみました。
 が、なんかまた灰色な気分に……。ああつまりその、わたしもライトノベル業界の末端にこっそり紛れこんでいる身なので、「ご都合主義のライトノベル」などと十羽一からげに一刀両断されると、たいへんに辛いものが。

 そういうわけで、フラットな視点で読めたとは思えないことをまず、お気にとめていただいた上で、以下の感想をご覧くださいね。

『指輪物語』『ナルニア国ものがたり』『ゲド戦記』など、いわゆる古典的なファンタジーに関して、著者の視点からの分析にはあらたな発見もあっておもしろく、またロマン派やケルト復興などの歴史的な流れについても興味深く読めました。コンパクトに、うまくまとまっていると思います。

 こらしめや仕返しについての論も、わたしは賛成できます。
 より自分の言葉でいうと、個人的な意趣返しに、偉大な魔法の力を使わないでほしい、とたんに魔法が卑小に、あるいは卑近になってしまい、ファンタジーの本来もち得る力が失われてしまうから……と、いったところでしょうか。

 ただ、「子供に与えるべき本」について論を張るときに、具体的に著者が駄目だと思っている本のタイトルがありそうなのにもかかわらず、それを書かないまま話を勧めること、また「ゲームには詳しくないが」としながら、ゲームをひとからげに批判していることなど、批判対象への把握が曖昧なまま進んで行く部分は、気になりました。

 社会全体の流れを論じる場合に、作品をひとつひとつとりあげていくとコンパクトにはまとまり得ないことはわかりますが、この書きかたは、ちょっと感心できません。なにしろ「具体的に作品名を挙げるわけにはいかないが」とまで書かれているので、なんで挙げるわけにはいかないのか、挙げられないものを持ち出してなにを語ろうとしているのか、読者による検証ができないのに著者側の考えの押しつけではないのか、……と感じてしまいます。
 挙げられないなら、語るべきではないのではないでしょうか?
 惜しいなぁ、と思いました。ネガティヴな評価を特定の作品にくだし、それを語ることは微妙な問題なので、避けたのでしょうけど、だったら最初から持ち出さない方がよかったのにと思います。
魔法ファンタジーの世界
著者名:脇明子(著)
出版社:岩波書店
出版年:2006.05
ISBN :4004310202
posted by うさぎ屋 at 18:17| Comment(4) | TrackBack(2) | その他の本

からくりサーカス完結

 これも昨日、本屋のレジ前で発見し、速攻でゲットしましたものです。はい。完結おめでとうございます! って感じで、カバーに描かれた主人公たちの笑顔の眩しいこと……。
 まさかフェイスレスを許したくなるとは思いませんでしたよ……。いや、ほんと酷いヤツなんですけど、フェイスレス。でも泣かされたわ〜。

 それにしても『うしおととら』のときも舌を巻きましたが、いわゆる脇役登場人物にいたるまで、こまかく拾い上げて無駄にしない、数多のエピソードが有機的につながってクライマックスへと、そしてその先の未来を読者に想像させる方向へ盛り上がって行くまとめっぷり。恐れ入りましてございます。

 きっと脳内メモリ領域が広いんですよねぇ。増設できるなら、わたしも増設したい……。←無理だから、それ。

 悲惨な展開であっても、清々しい。小さな人たちに読まれてほしい、支持されてほしい、素晴らしいファンタジーだと思います、藤田氏の描かれる漫画は。
からくりサーカス 43
著者名:藤田和日郎(著)
出版社:小学館
出版年:2006.08
ISBN :4091205704
posted by うさぎ屋 at 17:51| Comment(0) | TrackBack(0) | 漫画

2006年08月18日

王子様の彼女

 前述したように、少女マンガ展開カモ〜ン! な状態で本屋に行ったため、レジ前に並んでいたこの単行本も買ってみてしまいました。「いつか王子様のお嫁さんに63889」なんて文字が帯で踊っています。オーケイ、ヒァウィゴー! って感じです。
 まぁ現実にはもう結婚しちゃってますがな。王子様に求婚されても断然断りますがな……そんなめんどくさそうなもん、無理。

 それはともかく、そのまんまズバリの話でした。いつか王子様と結婚したいわと思っていた女の子の学校に、アラブの王子様がまとめて三人も留学(短期間ですが)していらっしゃいます。みなさんイケメンです。
 彼女が初志貫徹で心がまったく揺れないのが、たのもしいような、ちょっともったいないような。
 ちなみにアシュラフ王子はわたしもタイプですが(そうなのか!)、この展開だと造作だけで惚れちゃいましたって感じでもうちょっとこう……なにかこう……なにか乙女心が盛り上がるエピソードが欲しいなぁ、と贅沢なことを思いました。

 駄目ね、オバサンは。もう乙女心にもいろいろと贅肉がついててね……。
王子様の彼女
著者名:相原実貴(著)
出版社:小学館
出版年:2006.07
ISBN :4091305466
posted by うさぎ屋 at 20:40| Comment(0) | TrackBack(0) | 漫画

S・A 七巻

 本屋に行ったら出ていたので買ってきました! ありがとう本屋さん!

 しかし今回はラブラブファイヤーというかなんというか、いってはなんですが、すごくこう……とっ散らかった感じ? あっちもラブで、こっちもラブで、どっちもラブです。
 少女マンガ展開に餓えていたわたしですら、ええっ、そ、そこまでしていただかなくても……でも嬉しいかも……いや、いやいや、我慢の果てでないとやっぱり! とかワケわかんない反応しちゃう勢いでござりました。おもしろかったです。堪能しました。
S・A 7
著者名:南まき(著)
出版社:白泉社
出版年:2006.08
ISBN :4592181379
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2006年08月17日

レディー・ヴィクトリアン(+勧められてくれてありがとうの巻)

 発作的に買いました。十一巻から先も、お、おもしろい〜! バイタリティのあるヒロインと、社会的性別&生物学的性別の問題をきらびやかに駆け抜けるヒロイン/ヒーローのかっこよさ! そしてノエルさん、相変わらずかわいそうだけどちょっと報われててホッとしました。マーティン卿も天晴れよねぇ……。
  1. ノエルさん話のエピローグ&ベルのお兄さんが誤解を!? などなど。
  2. ミス・シェリーの画業、ノエルさんとアージェント・グレイの出会い&火事! など。
  3. ノエルさんのママ、ポーリーの夢遊病、などなど。
  4. 「…っつか いいかげんベルの行動パターンをつかめ オレ…」で、気の毒ながらウケました。指輪事件の巻。ベルのパパの最後の童話もこの巻。
  5. 「あなたを捨てたいと思うお母さんなんていないわよ」そしてオレ様のデビュタントの話&プリンス登場!
  6. マーティン卿のご覚悟(笑)、アージェントがいよいよ表舞台に!? の巻

 ……で、「17と18はたしか近所で売ってるからいいや!」とネット書店に注文しなかったため、ずんずん読み進めて16巻の最後で
「なんですって! 次、次……あああああ! ここまでしかナイ63895!」
 になっちゃったわたしって、なんて学習しないアホなのでしょうか……。いいかげん自分の行動パターンを読め、自分! うぇーん。
レディー・ヴィクトリアン 11
著者名:もとなおこ(著)
出版社:秋田書店
出版年:2003.10
ISBN :4253191371
レディー・ヴィクトリアン 12
著者名:もとなおこ(著)
出版社:秋田書店
出版年:2004.02
ISBN :425319138X
レディー・ヴィクトリアン 13
著者名:もとなおこ(著)
出版社:秋田書店
出版年:2004.06
ISBN :4253191398
レディー・ヴィクトリアン 14
著者名:もとなおこ(著)
出版社:秋田書店
出版年:2004.11
ISBN :4253191401
レディー・ヴィクトリアン 15
著者名:もとなおこ(著)
出版社:秋田書店
出版年:2005.03
ISBN :4253194753
レディー・ヴィクトリアン 16
著者名:もとなおこ(著)
出版社:秋田書店
出版年:2005.08
ISBN :4253194761

 有里さんもハマってくださったようで、嬉しいです〜。ちょっと前にプッシュした『ニューヨークの魔法使い』の方も、お気に召したようで、よかったよかった。
『ニューヨーク〜』は、deltazulさんもお買い上げくださりお気に召したようで、ほっとしました〜。

 自分の感想文がきっかけで、誰かが本を読んでくださるのはとても嬉しいことなので、読書感想ブログ等お持ちのかたは、トラックバックでおしらせくださいね。「うさぎ屋さんが勧めてたから読んでみた」という一文があると、さらに喜びます。えへへ〜。←幸せそうだなぁ。
posted by うさぎ屋 at 15:32| Comment(0) | TrackBack(0) | 漫画

2006年08月16日

読了メモ:論語

 鞄に入れっぱなしになっていた関係で、外出するたびにチビチビ読み進めていたのですが、ようやく最後まで辿り着きました。

 論語というと、なんだか格式張ったものが出てくるような気がしますが、「当たり前だけど実行するのは難しいこと」について、平易に語られた文章かなぁ、と、読み終えてみると思います。
 ただ「仁」とか「君子」とか、どう定義するかというのは、すごく難しそうな気がしますけど。

 先日、宮城谷氏の小説で読んだばかりの管仲の逸話も登場したのですが、旧知の人をみつけたような気分になったのが、我ながらおかしかったです。
論語
著者名:孔子(著)
     金谷治(訳注)
出版社:岩波書店
出版年:2003.06
ISBN :4003320212
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映画『ローズ・イン・タイドランド』

 先日、原作『タイドランド』を読んだ、映画『ローズ・イン・タイドランド』を、ようやく観てきました。一応、九月までは上映するようですが、上映回数が少なくなるようなので、わりとギリギリのタイミングだったかと思います。

 えーと……最近の流れからすると、なんだか厭味を書いていると思われそうでイヤなのですが63916、そういうのではなくですね、ほんとうに、原作を忠実に映像化した、といっていい出来でした。少なくとも、わたしはそう感じました。

 原作がなにしろ「ジャンキーの母親が死んだのでジャンキーの父親と一緒に田舎の家へ逃げだし、行った先の一軒家の中で父親はまたトリップしてしかも死んじゃったっぽいよ」という状況を、十歳かそこらの少女の視点から描きだすという代物ですから、イヤ〜な感じの内容です。
 自分をほっぽらかして「遠くへ行ってしまう」駄目親を直視しきれないからこそ、すべてを乗り切るために、主人公のジェライザ=ローズは切実に幻想を必要とし、日々、自分だけの世界をどんどん構築していく、と。だから、今回の幻想シーンはスケールが「少女のものさし」に終止していて、あまり遠くまで広がってはいきません。
 ふだんのギリアムは、もっとスケールの大きい幻想世界を描いていたので、その点はちょっとものたりないかな、と思いますが、この作品にそういう奥行きは不要、不適切なので、そこはしかたないでしょうね。

 そもそも、彼女の世界は非常に狭いのです。学校に行っていないし、両親は「ふと思いついたときだけ」彼女をかわいがり、そうでないときは注射の準備をさせ、あるいは足を揉ませ、悪罵を投げつけ、はたはまた無視し――こんな環境です。両親以外、親しく言葉をかわす知人がいない、というくらいの狭さです。

 その狭い世界で、幻想は現実から逃げる(脱出する)ための装置なのですが、彼女は徹頭徹尾幻想の中に居過ぎるので、現実に戻って「生きる」ためには、その幻想からも逃げ出さねばならない。だから、この映画は実は「崩壊しなければならない幻想の中での冒険」を描いたものだと思います。

 しいて欠点をあげれば、ジョデル・フェルランド(主役を演じた少女)が、達者過ぎ……ってことかなぁ。なにかが駄目というわけではないのですが、達者なんですよ。そうとしか表現できません。

 63870 映画公式サイト:http://rosein.jp/
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2006年08月14日

ル=グウィンの公式声明

http://www.ursulakleguin.com/GedoSenkiResponse.html(英語)

 スタジオ・ジブリの映画『ゲド戦記』について、原作者が公式声明を発表したそうです。あちこちで話題になっているので、気がつきました。

 わたしは映画は観ていませんが、「原作:ゲド戦記」で「原案:シュナの旅」などというクレジットができる神経を疑います。それを知った時点で、ものもいえなくなるほど怒ってしまったので(笑)、すでに見方は公平でないでしょうから、コメントは控え目にします。
I am told that Mr Hayao has not retired after all, but is now making another movie. This has increased my disappointment. I hope to put it behind me.

http://www.ursulakleguin.com/GedoSenkiResponse.html

 わたしも、宮崎駿監督は、ゲドの映画化を断ったときに、今度こそ引退するおつもりだと信じていたので、次回作の話を聞いてビックリです。そんな恥知らずなことがあっていいのかと思いましたが、実際にあるようですから、あるのでしょうね。

 どうか、いつかどこかの素晴らしい才能が、原作者に、ああ、自分の世界が映像になった、キャラクターが動いて話している! と思わせるような、真実のアースシーを撮ってくれますように。
 でも、もう原作者自身が映像化に絶望してしまわれたとしても無理はないと思います。残念です。とても残念です。
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2006年08月13日

ちょっと先の話ですが

 わたしの姉は漫画家です。「めるへんめーかー」と申します。よろしく。

 てわけで、姉がむかし『コミックMOE』に連載していた(たしか)漫画、『星降る森のリトル魔女』が、朝日ソノラマで文庫化されています。一巻は先月出ております。今月は二巻が出るんじゃないかと思います。

 で、不肖わたくし、解説を依頼されましたので、書きました。書いたというか、描いたというか……ていうか、これは解説じゃないような……。まあ十数年アシスタントをやってたので、その当時の話とか、こんな仕事を現場で実際にやっていましたとか、そういったあたりを。文字原稿というよりは、イラスト・エッセイのような形式で。

 描きましたが、本来は九月アタマといわれた〆切のものなので、本になるのは……いつでしょう?(笑)
 発売が近くなったら、またアナウンスさせていただきます。暫しお待ちくださいませ。

 いやもー……久しぶりにつけペン使ったら、疲れました。参りました〜。えんぴつでの落書きすら、最近ほとんどやってなかったんで、絵を描くこと自体が久しぶりでした。なんか、つらかったです……楽しくもありましたけど。テレビ流しっぱなしで作業できるって、いいなぁ。
星降る森のリトル魔女 1
著者名:めるへんめーかー(著)
出版社:朝日ソノラマ
出版年:2006.07
ISBN :4257723696
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2006年08月11日

読了メモ:戦う司書と神の石剣

 シリーズ第四作、読了。
 もともとマットアラストは好きなキャラだったので、今回は活躍の場が多く、嬉しいです。

 最後の方に、どわっと「世界全体」にかかわる謎が出てくるあたりで、栗原ちひろ氏の〈オペラ〜〉シリーズを思いだしました。共通点は、それだけです。ああ、いや待った、世界があまり遠くまで見渡せなくて(主人公が物語のなかで「今」いる場所以外が、どんなところなんだか、見当がつかないっていうか……)、キャラが一途なところも、なんとなく雰囲気は近いかな。
 作品の方向性はぜんぜん違う気がしますが、なんとなく、そんなことを考えました。世界全体云々については、〈オペラ〜〉の方が、より「最後の最後」に偏ってるかな、と思います。

 まあそれはそれとして。
 で、この最後に出てきた意味ありげ〜な一連のやりとりとか場面とかは、今後どう展開していくんでしょうねぇ。うーむ。
戦う司書と神の石剣
著者名:山形石雄(著)
出版社:集英社
出版年:2006.07
ISBN :408630306X
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2006年08月10日

読了メモ:虐げられしテクラ〈暗殺者ヴラド・タルトシュ 3〉

 思った通り、入手したまま積んでしまったタルトシュ三巻。いかんいかん、いかん、と読んでみました。
 面白くて途中でやめられないのはいつも通りですが、今までの二冊とは少々おもむきが違います。裏社会の掟こそが常識、暗殺上等、陰謀どんと来い、ドラゲイラの流儀で、ヤツらをあしらってやる――というのが今までのヴラド・タルトシュ流なんですが、今回はそれに「待った」がかかります。妻のカウティが、こともあろうに東方人(=人間)と、ドラゲイラのなかでも賤民にあたるテクラと手を組んで、待遇改善というか、帝国を根底からくつがえす革命思想にのっとった活動組織に身を投じてしまったのですね。

 そういう「既成の価値観をひっくり返す」視点から見ると、ヴラドのコジャレたやり口は、堕落であり、唾棄すべきものでしかないわけです。
 カウティも、もとは彼のようにドラゲイラとつきあい、ときには裏をかいて生き延びてきたわけですが、彼らのルールにはのっとっていた。つまり、ヴラドの同志みたいなものだったのが、いつのまにか、その正反対のグループに属していると。
 それも、なんの前触れもなく。ヴラドには告げずに。

 夫婦の危機! というわけで、今回はヴラドの信念も揺らいだりして、今までの二作とは読み味がずいぶん違いました。
 まあ、これはこれでいいと思うんですけど、組織のボスとして、今回のヴラドは働かなさ過ぎだと思います。この状態で、彼の部下が誰も乗っ取りをたくらまないのが不思議です。さっさとやっちゃえばいーのに。それがドラゲイラの裏社会というものではないのかな。まぁ、そういう事態が発生しないあたりがヴラドの人徳というか、無茶苦茶な事態に陥って、わやくちゃなことをやっても、最後にはきっちり帳尻が合うのが今までのスタイルなので、部下ももう慣れちゃってるのかも……。

 ちなみに、シリーズ三巻まではぽんぽんぽーんと出ましたが、この先の続刊が出るかどうかは、純粋に既刊の売れ行き次第みたいなことが、訳者あとがきに書かれていました。みなさんよろしくお願いします……。
虐げられしテクラ
著者名:スティーヴン・ブルースト(著)
     金子司(訳)
出版社:早川書房
出版年:2006.07
ISBN :4150204195
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2006年08月09日

夏目友人帳 二巻

 これも『魔法使いの娘』四巻と一緒に買いました。近所では見当たらなかったので。

 帯に力が入っているような気が……。作中の決め台詞(?)とか、キャラ紹介(画像つき)とか、狭いスペースに頑張って配置してあるなぁ、と暫し鑑賞してしまいました。花とゆめコミックスの帯って、前からこんなに頑張ってましたっけ? わたしは
「帯のぶんだけ「厚手の紙四枚」ぶん本が厚くなる。帯をつけたまま積むと崩れる原因になる」
 という理由で、買った本の帯はバンバン外して捨てています。よって、昔の帯と比較することができないのですが……いやマテ、そもそも帯つけて売ってる花ゆめコミックス自体がそんなに多くないんじゃないだろうか。

 ……。

 記憶サーチでは埒があかないので、この一件については、パス。

 そういうわけで、今回は帯を見れば収録作がどんなだったかわかる仕掛け。
 前巻同様、短編連作形式を踏襲しています。ホンモノが出ちゃった肝試し大会、呪いかけられちゃってヒノエと初対面の巻、夏目くん同類と初遭遇、そして妖にとり憑かれてしまう話の四本。まあどれもシンミリとしたお話でした。

 ひとつのお話としてみると、最後の傘持ち話がよくできていると思うのですが、夏目くんでなくても成立しちゃうお話でもあるところが、ちょっと弱いかなぁ、と感じました。うーむ。難しいですね。
夏目友人帳 2
著者名:緑川ゆき(著)
出版社:白泉社
出版年:2006.08
ISBN :4592171594

63870 一巻の感想
posted by うさぎ屋 at 14:03| Comment(5) | TrackBack(1) | 漫画

2006年08月08日

魔法使いの娘 四巻

 飄々としつつ、シビア、笑えてゾッとしてしんみりできて、やっぱり笑えるドメスティック・陰陽師・コメディのシリーズ第四巻。

 刊行されたことは知っていたんですが、近所の書店さんに入らず……今日、出先でフラフラと本屋に吸い寄せられて入ってみたら、発見! おお、やはり本屋は見たら入っておかねばな! と思ったことでした。

 読みはじめて、サテこのキャラ誰だっけ……と思うこと暫し。まあとにかく読んでしまえ、とエイヤッと読みきってから、一巻に戻ってみました。ええ。このシリーズは、珍しくちゃんと本棚にぜんぶ並んでるんですよ! わたしが掘り出して並べました! 根性で発掘整理。よく「博物館の収蔵品を整理していたら出てきた」とかいう史料の来歴を見て、ふざけんじゃねー、さっさと整理しとけ! と思いますが、自分がたかが家の本を整理するだけでヒィヒィいっていることを、よく考えるべきでした――以上、本部屋で格闘したときの回想。

 第四巻は、一巻で登場した青石朋絵とともにパパの指令(?)で引きずり回される話、幽霊マンションのキッズ・ルーム、犬の形をした墓と初音ちゃんのお墓参り、そして人形師につかまった操名の巻。
 安定したおもしろさです。パパのブッ飛びっぷりと、初音ちゃんのとことん地に足のついた主婦(笑)っぷりのギャップが、おもしろさの根っこにあるのかな、と思います。
魔法使いの娘 4
著者名:那州雪絵(著)
出版社:新書館
出版年:2006.07
ISBN :4403618391

63870 三巻の感想
posted by うさぎ屋 at 21:02| Comment(0) | TrackBack(0) | 漫画

読了メモ:タイドランド

 テリー・ギリアム監督作品『ローズ・イン・タイドランド』の原作。
 夏休みに突入して子供が家にいるので、なかなか映画館に行けず、昨今友人知己に口を酸っぱくして「映画だけ観て原作も知ってると思わないで、っていうか原作読んで!」と主張しつづけたことを顧みて、いかにわたしがギリアムのファンでも、自分とギリアムにだけ甘くふるまうのはおかしかろう。

 と、妙な公正さを発揮して、映画を観る前に一念発起して原作を読んでみました。
 感想は「きっついなー、コレ」。

 主人公は十一歳の少女ジェライザ=ローズ。彼女の父はミュージシャンで、薬物中毒。母が過剰摂取で死んでしまったため(もちろん薬物の)、始末に困って都会の家を逃げ出し、彼が昔その母親(つまり、ローズの祖母)に買ってやったというテキサスの田舎の一軒家へ。
 テレビもない。電話もない。水もない。そんな家に着いてすぐ、父親はまたトリップ開始、そしてつれあいと同じ道を辿ってしまいます。
 動かない父親に向かって、ちょっと留守してるだけだよね? とローズは声をかけます。彼女の記憶によれば、パパは前にもそうやって、座ったまま一週間も動かないことがあったから。それに、座ったまま人が死ぬなんておかしい。死ぬっていうのは、ママみたいに暴れて、苦しんで、もがいて、のたうちまわってから。静かに座ったまま死ぬはずがない。だからパパは死んでない――三段論法による、Q.E.D.

 徹頭徹尾、こんなのひどい、間違っている、という状況が「少女の視点」から描かれます。そのものズバリという表現はなくても、読者には、それが「我々の現実ではどう呼ばれるものか」が、なんとなくわかる仕掛け。
 それは死んでいるのだ、それは悲惨な事故のあとだ、それは吸血ではない、それは――と、いくらでもつづけられるのですよ。その悲惨さをぼかし、遠ざけるのが、ほかならぬローズ自身の視点で押し通す、という手法で、もう、

 狂ってる。

 としか、いいようがありません。狂うことでしか受け入れられないような現実を、とんでも妄想でふわっとカバーした内容。そんなの読みたいか? と問われると微妙なところですが、わたしはこの本を嫌いではありません。大好きな本とも思わないけれど。
 やっぱり世界は実際に狂ってるんだろうな、と思うから……かな。好き嫌いではなく、よくぞ書いた! と感じますね。この作者はすごい。まあ一読して損はないかと――ただし、万人向けとはいえないです。
タイドランド
著者名:ミッチ・カリン(著)
     金原瑞人(訳)
出版社:角川書店
出版年:2004.11
ISBN :4047914827
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2006年08月06日

読了メモ:聚楽 太閤の錬金窟

『信長』につづき、先に買ってあった『聚楽』も読みました。ああ、おもしろい、おもしろい、おもしろい! 奇想ここに窮まれり!

 冒頭から少しを読むと、後の「殺生関白」にして秀吉の甥、豊臣秀次の出自を作者がここでどう見立てたか、がわかります。

 それがわかると、ああなるほど、では後年のあのエピソードはこういう風に、あれはこう、これはそう、なるほどなるほど、うわー! と視界が開けていくような心地で、実におもしろい。ちょうど『功名が辻』を一気読みしたあとだったのも良かったと思います。なにしろ、あれは信長から秀吉、家康と主君を渡り歩いた武将(と、その妻)の一代記、しかも著者が史料にこまかく言及する司馬遼太郎氏なので、「ああ、あの史料をこう使うんだ!」とわかるわけですよ。
 秀次のどこかちぐはぐな行動や、秀吉の老耄をあらわすかのような愚行の一切が、この「見立て」で解釈され尽くした風なのは、まさに圧巻。

 ただ、その「見立て」のおもしろさが、戦国日本側には強烈に感じられるのに比して、錬金術および異端については知識が中途半端なので、「ああ、あれが!」感が薄かったのは残念なことでした。む〜ん。まだまだ修行がたりませぬ。

 本書の感想というのとはちょっと違う気もしますが、『功名が辻』つながりでいうと、一豊こと伊右衛門が秀次のもとへ行くというエピソードを記憶していたので、それをどう使うのかとワクワクしながら読んでいたところ、スッポリと抜け落ちていたのが残念でした。
『信長』よりいっそう伝奇寄り、といっていいのかな? とにかく、すごい作品でした。
聚楽
著者名:宇月原晴明(著)
出版社:新潮社
出版年:2005.10
ISBN :4101309329
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2006年08月04日

翻訳ファンタジーを読もう

 翻訳ファンタジーを読もう! などと、わざわざタイトルにあげるのはですね。
 思ったからなんですね。あんまり読まれなくなっているんだなぁ、と。
 いや、『ハリー・ポッター』とかたしかにブームなんでしょうけど、児童文学として出版されているものの一部が突出して売れているだけで、むしろ文庫翻訳の方は、昔より読まれなくなっているのかな、と思います。

 最初に実感したのは去年のSF大会のときで、企画に来てくださったかたがたに
「ファーシーアの一族読んでる人〜」
「影のオンブリア読んでる人〜」
「デイルマーク読んでる人〜」
 で、挙手を募ったところ、どれもお一人様(しかもずっと同じ人)だけだった。という体験をしたときでした。
 ファンタジーの企画で、ですよ〜。なんでそうなるの〜(泣きくずれる)。

 たまにウェブで感想文を探してみたりするのですが、とにかく数が少ないので、ひょっとして「買う」ところまではいっても「読む」ところまで行く人が少なく、さらにそこから感想文を書くなどして広めようとする人は絶望的に少ないのでは? と思いました。

 じゃあまず自分が頑張れ、ってことなんですが。
 えーと、ハイ。善処します。といいつつ、家族旅行の余波で疲れ果てていて、また長文感想文の更新が滞っていますが。

 というわけで先月の読了本からプッシュなんですが、『ニューヨークの魔法使い』、これがアナタ。ネットで検索しても、ろくに感想文を見かけないのですよ。
 楽しく読める、いい作品だと思うのになぁ。

 物語は、魔法の力がこれっぽっちもないせいで、他人の魔法にすら影響されないヒロインが、テキサスの田舎からニューヨークに出てきた――という設定で始まります。出身地にコンプレックスを感じていることもあって、エルフを目撃しても
「まぁ、また『ロード・オブ・ザ・リング』のファンがコスプレしてるわ! なのに誰も目もくれないなんて、ニューヨークって、ほんとに変な街ね!」
 と、彼女は思ってしまうのです――もちろん、エルフたちは目くらましの魔法で、自分たちがふつうの人間に混ざっても違和感ないようにしているのですが、彼女には効かないため、本来の姿が見えてしまっているわけ。
 彼女が「見えちゃってる」ことに気がついた魔法使いやら妖精たちは、この貴重な資質の持ち主を味方につけようとヘッドハントに乗り出すわけですが、なにしろ舞台は現代ニューヨーク。コンタクトは電子メールです。それが〈ミス・キャスリーン・チャンドラーに、素晴らしいチャンス〉というタイトルなので、もちろん、ミス・キャスリーン・チャンドラーである主人公は「またスパムだわ」と魔法使いからのメールをゴミ箱にポイ。
 63870 読了メモ
 63870 感想文@読書録

 翻訳ファンタジー(の、新しい作品)を、もっと読みましょうよ〜! と、いうお話でした。どっとはらい。
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2006年08月03日

読了メモ:信長 あるいは戴冠せるアンドロギュヌス

 二泊で出かけるというのに本を持って行くのを忘れたので、出先で購入。というか、近所にはなかったので、喜んで買いましたです。ハイ。もともと、【日々雑景】ブログで「読了本メモ」として本書が挙げられているのを見て文庫化を知り(遅っ!)、ようやく、今頃、遅ればせながら読みました。
 もともと、買いに行ったらば近所の書店には『聚楽』しかなく。『聚落』を買っては来たけど、やっぱり『信長』から順番に読みたいな、と思って今に至るわけです……。

 いやまあ、そんな事情はともかく、出先でうっかり読みふけってしまうほど、おもしろかったです。
 詩人、アントナン・アルトーのもとへ、謎の東洋人があらわれて、信長はヘリオガバルスが信奉したバール信仰を中世日本によみがえらせた者であり、対になる存在である……というようなことを匂わせると。あの史料も、この史料も、「そういう目で見ると!」と辻褄が合ってしまう面白さ。これは素晴らしい。
 アルトーの手稿と見なされるパート、そしてそのアルトーが生きた1900年代初頭のパート、そして戦国日本。この各パートが絡み合って、複雑精妙な世界が構築されていく逸品です。

 わたしは著者が巻末に挙げた参考文献のなかで「特に」多くを拠ったとしるしている中の二冊、『ヘリオガバルス または戴冠せるアナーキスト』を読んでいるし(→感想、山本ひろ子氏の牛頭天王研究が収録されている(と思う)『異神』も上下巻の上巻は全部読んだのですが(感想なし。ちょうど感想文をサボっている時期でした。『中世神話』の方は感想文があるけれども、これは「神話の書き換え」に力点が置かれていた本だったような記憶がうっすら……うーん、ちょっと自信ナシ。でも「牛頭天王」についてだったら、『異神』じゃないかなぁ)、このふたつを結びつけようという発想はまったく浮かびませんでした。

 というか、ふつう浮かばない。ですよね?

 著者の発想の妙、そしてそれを見事に構築する手練のわざに、まことに感服つかまつりました次第。
信長
著者名:宇月原晴明(著)
出版社:新潮社
出版年:2002.09
ISBN :4101309310
posted by うさぎ屋 at 23:04| Comment(2) | TrackBack(1) | 日記